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Andante
再会2


「ちょっ……!なんか予想以上にピザが立派なんだけど!」


俺が想像していたのは紙の容器に入ったデリバリーピザだけど、ウェイターさんが届けにきてくれたのは大きなまっ白い平皿に乗ったどう見ても手作りのピザだった。
まだ焼きたてだぞと言わんばかりの香りが食欲をそそる。

あっちなみにウェイターさんはいつものウェイターさんじゃなくて見覚えのない顔の人だったので安心して欲しい。


「デリバリーと言ってもこの学校で作ったものだからな」

「学食で出るやつよりも全然でけえ……」


一般寮でデリバリーなんて、と渋っていた慧もキラキラと目を輝かせていた。


「サラダとポテトと……やったからあげ!
なんかもろパーティーってかんじだな!」


空腹時にこのご馳走はたまらんなあ、と俺は頬をゆるませながら席に着く。
時雨はたしかに、と珍しく俺に同調し、難しい顔で食卓を睨んだ。


「今日の食事はかなりカロリーが高いな……」


料理を用意させた本人がそれを言うのはどうなんだ。


「食いづらくなるから止めろよそう言うの……」


そう言いながら慧も今度は現実的な視点で料理を眺めた。
じっと料理に目を向ける二人の頭は今、糖分と脂肪と塩分の3兄妹に支配されていることだろう。



「いいから早く食べようぜっ!」


このまま食べない流れになったらまずいと、俺は半ば自棄になって叫んだ。
スポーツ選手としてアウトなメニューかもしれないけれど、合宿で色々と好きなものを我慢した分今日だけは羽目を外してしまいたい!


「はい、いただきまーす!」


慧と時雨が大人しく座ったのを見て俺は速攻で手を合わせた。


「おいおい……」


そんなに腹が減ってたのか、と時雨が呆れている。
いいからお前も食え、とポテトを咥えながら目で促すと、時雨と慧は苦笑いしながらぼそりといただきますと呟いた。



「うわ、服に油染みついた!」

「は!?……てお前油どころか真っ赤じゃねーか!どんだけピザこぼしてんだよ!」

「さっき食べながら寝てたぞ」

「チクるぐらいならなんでフォローしてやらないんだ会長……」



パーティー開始から数時間。
食べて喋ってふざけまくってとうとう俺の体は限界を迎えた。
さっきから眠気の波に揺さぶられ続けていてそろそろ抗えなくなってきている。


「錬、早めに洗った方がいいから脱げよ」

「おれにすっぽんぽんになれってゆうのか……ざけんな!
そうゆうのはまず自分が脱いでからいえ!」

「ハッ!こいつ烏龍茶で酔っぱらったんじゃないか」


慧にむちゃくちゃ言って突っかかる俺を時雨が指差して思い切り馬鹿にした。
なんだとこの野郎、と言い返す間もなく、俺の瞼に強烈な重量がかかった。
瞼が重くなったっていうか、開く力もなくなったというか。

とにかく俺は、そのままテーブルにのめり込むようにして瞳を閉じる。
ぐわんぐわんと世界が揺れるような感覚が、間髪入れずに俺を襲った。
体が自由に揺れるような感覚がして気持ちいい。

ああ、寝てしまう……


こんなに楽しい夜に意識を手放すなんて勿体なさすぎて、俺はしばらく揺れる意識と戦ったけれど勝敗は明らかだった。


ハッとして目を開け体を起こすと、慧はイヤホンでテレビを見ながらシィー、と口に指を当てた。
時計の針は12時を指すところだった。



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あきゅろす。
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