Andante
5
慌てて南口へ駆けると、そこには会長の手配した車が2人を待っていた。
「いつも通り、思いっ切りやってこいよ、錬!会長!」
会長の実力はこの学校では群を抜いているし、その会長が去年落ちたという選抜に受かったのだから、錬もそれ以上に上手いのだろう。
良い報告を期待して、俺は2人の背中を押す。
「おう!慧、俺がいないからってさみしがるなよっ!」
「いいから早く乗れ」
別れを惜しむ時間をバッサリ切り捨てて、会長は錬を車に押し込んだ。
車の中からふざけるなよお前と騒ぐ錬の声が聞こえてきて、俺は2人の関係性に思わず笑みをこぼす。
会長は何も言わなかったけれど、俺の方を見てフっと小さく笑った。
「出してくれ」
「じゃあな慧っ!」
言うが早く、車は選抜合宿へと走り出した。
「がんばってこいよっ!!」
手を振りながらそう叫ぶ。
車はやがて小さくなって見えなくなった。
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