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Andante
2


「すごいな……」


予想だにしない絶景に思わず呟く。

あまり大きくはないけれど、さわめく森と静かな湖のコントラストは心洗われるものがあった。
湖の濁りのない煌めきが美しく神秘的だ。

それを眺めていると、段々とさっきまでの好奇心が影を潜めていった。
ほんと、勢いのまま凄いところまで来ちゃったなあ。
落ち着きを取り戻した俺は、これからどうしようとその場に腰を下ろす。


「……慧、探してくれてるよな……」


心許なく吹く風に曝されながら、俺はポツリと呟いた。
セミの鳴き声にかき消されたその呟きが、早く部屋に戻らなければと俺を焦らせる。
早く戻って慧に謝らなければならない。
だってあいつは絶対俺を探している。
そういう奴なのだから。

けれど校舎へ戻ろうと湖に背を向けた所で歩き出すことができなかった。
ここは探索中に見つけて好奇心から足を踏み入れた場所だ。
……どう帰る?
あの時の俺は無鉄砲に歩いていたわけで、無論道など覚えていない。


「こんな所探さないよなあ……」


まっすぐ寮に戻ると約束した相手が森の中で迷っているなんて誰が想像するだろう。
慧との合流も難しそうで、湖を見ながらため息をつく。

自分の馬鹿さ加減に泣きたくなるのをぐっと堪えたその時、後ろから物音が聞こえてくる。


「さ、慧……?」


まさかとは思いつつ期待を込めて振り向くと、そこにはひどく驚いた様子の青年が立っていた。

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