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Andante
到着



「着いた……」


母さん曰くここから先は車は通行禁止だそうで、校門前に降ろしてもらったのだけれど、見えるのは上品に飾られた道だけで校舎らしきものはまだ見えない。
こりゃ相当な距離があるな……。


「うわ……」


本当に学校なのか疑ってしまうほどに、その学園は綺麗で壮大だった。
自然と人工物が違和感を感じさせることなくお互いを飾りあっている。
手入れの行き届いた様子からしても俺の知っている学校とは比べものにならないだろう。


「あんたこれからここで暮らすのよ〜?
馴染めるのかしらねぇ」


そびえ立つ門を前に、対して心配してなさそうな気楽な声で母さんが言う。


「……無理だと思う」


こんなキラキラした洋風のいかにも金がかかっていそうな学校に、常に駆け回り泥だらけな俺が住むなんて……場違いというものだ。

それに、漫画とかに出てくる金持ちって性格悪い人多いからなあ…………特にスネ夫とかスネ夫とかスネ夫とか。

夏休み中はいいにしても学校生活が心配だ。
ちゃんと友達出来るんだろうか……不安だ……。


「兄貴の紹介する学校になんて転校するんじゃなかったかな……」


サッカーを続けるなら、と勧められたのがこの学校だったんだけど、兄貴ってちゃらんぽらんの鏡だからなあ……。

……まぁ住めば都って言葉もあるし、希望は捨てちゃだめだよな。
不安ながらも門に向かう。


「てかこんなでかい門どうやってあければ……」


とりあえず持ち手があるので引いてみようと手を伸ばしたのと同時に


ギギギ……

と重々しい音を立てて、それはひとりでに開いたのだった。
ちなみに動いたのは門の一部だけで車が通れる幅はなく、歩いて通ることを余儀なくされている。

……恐いわ……っ!
扉は鉄で出来た格子状のもので、明らかに自動であきそうなドアじゃなかったのに……

予期せぬ事態にびびり始めた俺を横目に、母さんは再び車に乗り込んだ。


「じゃあ、これからてきとーにがんばりなさいよー」


「あ、ちょっ……」


清々しい笑顔で去ってゆく母を、俺は少し切ない眼差しで見送った。
元々放任主義な過程だったけれど別れ方があまりにもあっさり過ぎる……。

1人残され、戸惑いながらも門の中に足を踏み入れる。
まずは理事長に挨拶に向かい、その後部屋に案内される手筈だ。

少し歩いた所で後ろを振り向けば、開いていた戸はガシャンと音を立てて閉まりきった。
格子の隙間から見える風景が何となく遠く見えて、俺は前にいた世界から隔離されたような気がした。




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あきゅろす。
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