Andante
進展4
「あの、俺、氷柳錬。
わかんないこととかガンガン聞くから、めっちゃよろしく」
改めて挨拶をする俺に慧がフッと目を細める。
「任せろよ、もうここで暮らして二年だ」
自信満々に言う慧は結構頼もしい。
「錬って呼んで平気か?」
「もちろん!
…………うーん……俺も慧でいいだろ?」
俺の言葉に反応してか、ギシリと動きを止めた慧がゆっくりこちらを振り向く。
「今の間はなんだ今の間はなんだ。
実は名前呼びが不満か……?」
…………慧君、お顔が怖いよー……?
苦虫をかみつぶしたような表情の慧に誤解だ、と苦笑いする。
「あだ名考えたけど良いの浮かばなかったんだよー」
「……お気に召すあだ名がなくてよかったよ…………」
「なんで?」
再びダンボールに手を伸ばした慧がそう零すので不思議に思って尋ねる。
「お前、なんとなくネーミングセンス悪そう」
「……………………」
部屋に入る前もこんな事があった気がする。
なんて、なんて失礼な奴だろう。
絶句しながら、俺はさっきの発言を微塵も気にしていない慧を見据えた。
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