Andante
進展2
鳳さんはおもむろに俺に近寄ると、ポンポンと頭を叩いてきた。……いや、これは撫でている、と言うのだろうか……。
とにかく、あやすような手つきで俺の頭に手を置いているのだ。
「さっきの説明で、寮については大体理解できたか」
「あっはい!」
唐突に話を戻した鳳さんに俺は条件反射で返事してしまう。
おかげで全然理解できないまま話は進んでいってしまう。
「さあ、部屋まで案内しよう」
ありがたいと思ったが、菊岡さんに仕事があるってことは、多分鳳さんにもあるだろう。
「あの、だいじょぶです。この階の中なら、俺だけで行けますから」
それもそうかと頷きながら、鳳さんは本当に大丈夫かと尋ねてくる。
それに笑顔で返事をすると、鳳さんは餞別とばかりに俺の髪をぐしゃりとかき混ぜた。
「何かあったら会いに来い。相談にならのれる」
「ありがとうございます。事務室、遊びに行きますね」
鳳さんと顔を見合わせて笑う。
ああ、やっぱり彼と仲良くなれてよかった。
優しく細められた目は、疲れた俺を暖かく癒してくれた様な気がした。
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