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Andante
到着5

さて、俺はしゃべるのは好きな方だ。
楽しいし、相手の性格とかも詳しくわかるし。
……けど、それはあくまでも仲のいい友達に対してだったらしい。
今、俺は激しく人見知りをしている。


思わず俯いてしまうほどに気まずい。
鳳さんとの間に全く会話が生まれないのだ。
淡々と前を歩く鳳さんには特に何かを説明したり話を振ってくる様子はない。
俺としては色々知りたいことや聞きたいことがあったけど、そんな鳳さんの様子を見ると話しかけていいのかわからなくなってしまった。

見たところ、彼は俺に興味がないんだろう。
少なくとも会話する気は更々ないだろうことが窺えた。
ちょっと悲しいけど、大人と子供なんてみんなこんなものなのかな、きっと。
俺はそわそわと彼に視線を送りながら、きゅっと唇を閉じた。


そして無言のまま歩いて数分後、無事に理事長室にたどり着いた。
鳳さんがドアをノックする。


「入りなさい」


聞こえる声に、鳳さんが俺に入れと目線で促す。
鳳さん自身は部屋に入る気はないらしく、ドアを引きながら少し離れた位置で待機していた。


「失礼します」


赤毛さんの話を思い出しながら少し緊張して部屋に入る。
赤毛さんが苦手にするって一体どんな人なのだろう。



「よくきたね、錬くん」

「どうもはじめまして……」



あぁ、たしかに狐っぽい。

これが理事長に対する第一印象だった。

細い体に細い目。
緩く弧を描いた口元がなんだか胡散臭い雰囲気だ。


「ようこそ、日の出学園へ!
君が早くこの学園にとけ込めるように願ってるよ」


にんまり笑む理事長からは、人を馬鹿にするような嫌な印象を感じない。


「ありがとうございます」


…………思ってた以上にいい人そう、かな?
でもSに気を許すとすぐに虐められるのは15年の歳月で実証済みなのでまだ気は抜けない。


「僕はここの理事長の朝御塚信悟。よろしくね」


ない頭でうだうだ考えている俺に、理事長がそう言って手を差し出してきた。
握り返してみれば、それは白くて大きくてあったかい手だった。


「よろしくお願いします」

「ここまで来るのも疲れたでしょ。甘いの平気?ミルクティー作って冷やしてたんだけどどうかな?」

「あ、い、いただきます……」


よく冷えた美味しそうなミルクティーを出してくれる理事長。
ああ、彼はいい人だ。
俺の好きな飲み物が偶然にもミルクティーだとかそう言うのは関係ないが、最初は怪しく見えた笑顔も今は素敵スマイルに見える。

赤毛さん、狐さんはめちゃくちゃいい人ですよ。

……ちなみに単純とか厳禁とかは言われ慣れすぎて自覚してます。



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あきゅろす。
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