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Andante
三日目3

この席のお客さんはノリが良さそうな女子の3人組だった。
砂時計が空になる前に食べきろうとする俺をお客さんは終始笑顔で見守ってくれた。
心が広くてありがたいことだ。
口元が汚れていたらしく、可愛らしくついてるよ?なんて言って拭いてくれるものだからむしろ俺が持てなされてる気さえした。
あれはグッときた。チャンスがあったら真似してみるか。

去った後のテーブルをパパッと片し、他のテーブルに料理を運んだりと忙しく歩き回っていると、何時の間にか近くなったざわめきに気づかなかった。


「随分繁盛してるな」

「時雨!」


とうとう元凶が中に入って来た。
人目が多いからか、常に優等生モードの笑顔を振りまいている。
時雨一行は7人と大所帯なので二組に分かれるらしく、時雨の他に二人を一緒の席に案内した。


「いらっしゃいませー!
よかった、案外早く入ってきたな。
サッカーが始まる前に来れなかったらどうしようかと」


ちなみに、今は12時ちょっと前。
サッカーの出し物が始まる約一時間前だ。


俺の言葉に時雨はきょとんとした顔をした。


「俺は今日顔を出さないよ?行くとしても最後の方だと思う」

「え!?」


初耳だよ!


「なんだよそれー!時雨がいた方がなにかと盛り上がるのに……」

「大丈夫!俺が時雨の代わりに行ってあげるからさあ〜」


時雨の隣に腰掛けていた人が朗らかに笑った。
多分、というか間違いなく生徒会の人だろう。
曖昧に笑う俺に彼は益々笑みを深めた。


「遙風、君にも仕事があるはずなんだけど。
また紫苑に押し付けるのかい?」

「俺はやりたいことがたくさんあるのー」


あきれた風に言う時雨に、遙風と呼ばれた人は興味なさげに答えた。

ちらりと入り口の方を窺う。
料理は……まだ届かないか。


「それにしても、氷柳クンお団子似合うねー。かわいいよ〜。
部活のときとは全然違うよね、雰囲気が」

「ど、どうも……」


駄目だ、何となく気後れしてしまう。
今まで散々聞かされてきた話や周りの視線から、生徒会の重みというか、凄さが感覚的に伝わって来たから。
時雨1人なら気にならなかったけど、勢ぞろいされると流石にオーラに負けそうになる。


「お待たせいたしました、メイプルフォカッチオのセットとアイスマッドパイのセット、お持ちしましたー」


カチコチに固まる俺をフォローするかのようにひょい、と慧がテーブルに料理を置く。
そしてそのまま俺の隣に腰掛けた。


「慧?」

「生徒会はVIP待遇だとさ。あっちは三人がかり」


ちらっと慧が促した方を見ると、キラキラとしたオーラを纏った一団がいた。
4人につく接客係三人はみんな蕩けそうな表情をしている。
……なんか、3人揃って卒倒しそうな感じなんだけど大丈夫だろうか。


「あっちもフォロ−がいるんじゃ……」

「馬鹿はほっとけ」


慧はツーンとした態度で持ってきたクッキーを口にした。

その間に委員長扮する三国武将もどきがその席に近づいていき、三人のうち1人が入れ替わりでしょんぼりと席を立った。

まあこれで一安心かな。



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