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Andante
ハイレベル2




開け放した窓からサワサワと風が吹き込んでくる。
周りが森なだけあって、入ってくる風は心地の良い冷たさと癒しをくれる。

それでもまだ暑いが、クーラーは体に悪いから極力つけたくない。
練習や試合の為にも暑さになれておいた方がいいし。



「時雨、解き終わったー!」


教科書の問題をこなすと、俺はすぐさまソファーにもたれ掛かった。
ハタハタと手で扇ぐ俺の正面で、ノートを受け取った時雨が俺の回答を確かめている。



「問題ない」

「よぉぉし……!」


時雨はなかなかスパルタだ。
問題を解いて見せて間違えたらまた最初からやり直させる。
もう章末問題を解くのは3回目で、最後まで苦戦した証明問題以外は答えをほぼ暗記してしまった。



「結構かかったな」

「今何時?」


お疲れ、と笑う慧に尋ねる。
勉強に必死だったのと、外の明るさが微塵も変わらないこともあり時間感覚が麻痺してしまっている。
相当頑張ったな、俺。


「もう4時だぞ」

「まじか!」


俺がサッカーの練習から帰ってきたのが12時。
時雨がこの部屋からきたのが2時だ。


「2時間もぶっ通しで勉強してたのか……!」


通りで頭がズキズキするわけだ。
勉強する習慣のない俺にとってはオーバーワークすぎる。

ぐったりとソファーに沈み込んだ俺に時雨が唇を歪めた。


「この問題が解けたなら次はこの単元の問題だな」

「ふざけんな!
もう今日はシャーペンなんて握らないぞ!」


勢いよくソファーから起き上がって時雨に対峙する。
横からは慧が落ち着けと言わんばかりにうちわでハタハタと風を送ってくる。

力が抜け再びソファーに戻った俺に横目で笑い、時雨が席を立った。


「そろそろ生徒会の方に戻る」


「あ〜。やっぱり文化祭で忙しいよな」


悪いな勉強見てもらっちゃって、と慧が言えば、時雨はニヤリと口を歪めた。


「借りは返してもらうから気にするな」

「え!?」

「慧、時雨はこうゆうやつだよ。
素直にお礼言ってもどういたしましてなんて返ってこないよ」


今はそうでもないが、慧は時雨をすごくいい人だと思っている。
実物とのギャップをフォローするのは俺の役目なのだ。



「邪魔したな」

「仕事がんばれよー」


澄ました顔の時雨を2人で見送る。
ドアが閉まりきったところで、ようやくスパルタ教育が終わったと俺は肩の力をおろした。



「慧、もうこの部屋に時雨呼んで勉強するなよ」


咎めるようにそう言った俺の頭に、アホかと苦笑いした慧の平手が降ってきた。




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あきゅろす。
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