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KAZAMI

馴染みのバーのフットライトの琥珀色は、片隅の闇にさえ懐かしい紗をかける。
エスプレッソの深い香りを楽しんでいたらふと、「そういえばあいつもコレが好きだったな」と思い出した。




「久しぶりだな。元気にやってるか?」

「まあまあだな。お前こそ、まだくたばってなかったんだな」



「オレは、やもめになったお前がしょぼくれてんじゃねえかって、心配したぞ」

「・・へこたれてないさ。まだ守るモンがあるからな」



「送ってくれた写真、みたぞ。綺麗な奴だな」

「ハハハ、あいつは女房似でなあ」



学舎らしい緑に囲まれた建物を背景に微笑んでいた少年は
その視線が、鮮烈な印象をオレに与えた



(あの眼は・・すげえ。)


アレは、人の心を奪うために生まれついた眼だ

女ならば傾国、男ならば崇拝者を操る凶器になるだろう。



「もう少し育ったら、ショーコに似た美形になるぞ。おまえに外見似なくて心底ラッキーだったな」

「ははは俺を誉められたみたいで照れるなあ。・・って今、オマエすげえ失礼なこと言っただろ!?」



「気にすんな。女だったら即、ボンゴレに勧誘して、オレの5番目の愛人にしたいくらいの上玉だ」

「父親の前で愛人なんぞとぬかしやがるヤツは、簀巻きにして利根川に流すぞ!コラ」



「まだ手エだしてねえのにガタガタぬかすな」

「手エだされてからじゃ遅いだろうがっ!!」



相変わらずの、打てば響くようなやりとりに口元が緩む。
いじりがいのある男だ。


「あのくらいの年頃は、あっというまに大人になっちまうんだろうな」

「ああ。・・そうだな」




遠距離のためか、耳に残るざらついたノイズ。


「大人になっても、男でも、女でも関係ないんだ。子供なんて、生きててくれさえすれば幸せになっちまう。
親なんてそりゃあ簡単なイキモノだぜ、リボーン」



知の鬼才と謳われた男の、静かで無欲な言の葉。


「飯食って、働いて、家族をつくっていつか老いぼれて死んでいく・・平凡なはずの一生って奴は」



白く濁った、混沌をかきまぜるように-----



「どうして、一番、遠くに見えるんだろうな」




* * * * * *


DATA:KAZAMI

風見の系譜の、女子にのみ稀に顕現
KAZAMI発現が確認された、最終記録地は日本
 現在生存が確認されている女系・0人
 現在生存が確認されている男系・1人



ボンゴレのデータバンクで目にした、無機質な事実。

------なお一族の男系は極めて短命であり、歴代は全て十代で死亡



もし女だったならば、その体をめぐって目敏い者達の間で壮絶な奪い合いがおこり狙われただろう。

男だからこそ、自由に生きることができる命も、あるのだ。
短命という枷と引き替えに。



「折角のジャッポーネ行きだ。・・・ついでに、会ってみるぜ?」


切れた電話の向こうは
友との再会を約束する、異国の地



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