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きみを知らない

骸×綱/血表現アリ




―――……




「好きです」とか「愛してます」とか、甘くてぞっとするような事を平気で言う骸は、
厳しく突き刺さる言葉も平気でさらりと言ってしまう。

それはたとえ相手が俺であってもだ。





この日、フリーの殺し屋が街中で銃を乱射する事件があった。

詳しい事情はわからない、

すぐに裏から手が回り隠蔽されてしまったからだ。

何十人も人が死んだにも関わらず、


俺と、護衛についていた骸は、その時偶然通りかかった。

はじめの銃声と同時に、後ろから付いてきていた骸が俺の前にまわりこむ。

後ろ手で俺を庇うようにした骸は、いつでも攻撃できるように戦闘体制を整え終えていた。

「骸、もしかしてこれって、」

俺を狙っての事か、そう言おうとしたのを、連続した銃声に遮られる。

「気が狂ったのか、誰かに追われているのか、あの様子では君を狙った者ではないでしょう」

こんな状況だというのに、骸はその端整な顔に微笑までも浮かべている。
その声色からして、
どこか愉しそうでもあるような気がした。
ただ、俺がそう感じただけかもしれない。

骸の目線の先、それ程離れていない所に、銃を乱射したであろう人物が立っていた。

青白い顔をして、何かに追われているかのような、緊迫した様子だった。
保身の為か、何を恐れているのか。

ぜぇぜぇと荒い息を吐くその男は、今にもまた発砲し始めようとしていた。

今更だが、これだけ近いところに居て銃弾が当たらなかったのは骸のお陰だろうか。
それともただの偶然か。

俺の周りは、吐きそうになるような血の臭いでむせ返っていた。

慣れない。
こればかりはマフィアのボスになりいくらか経つ今になっても慣れなかった。

錆びたような生臭いような血の臭いに、思わず嗚咽を洩らしてしまう。
慌てて両手で口を押さえる。
情けない、骸は眉ひとつ動かしていないというのに。

「目をそむけたいなら、臭いを遮ればいい、目を固く閉じて唇を引き結んで」

「馬鹿…」

「くふふ。それは心外ですねぇ」

「鼻も口も塞いだら死ぬだろ」

「おや、綱吉でも気付くものですね」

「馬鹿にするなよ!」

俺の言葉を笑って受け流す骸、

と同時に、辺りに銃声が響き渡る。

しまった、こんな会話なんてしてる場合じゃなかったのだ。

そう思い、慌てて骸の名を呼ぶ。

「止めさせなくちゃ!」

こんな街中で目立つのはよくない。

けどもう悲鳴を上げながら殆どの人は逃げ出していて、
あとは座り込んだまま動けなくなった人と、横たわったまま動かない人。

「その必要はありませんよ、彼ならもう死んでます」

さっきの銃声は、自害によるものだった。
ほんの数分、何十人もの命を奪ったその男は、最後に自らの命をも絶った。
呆気ない。

「う…」

治まっていた吐き気が途端にこみ上げてきて、俺は座り込みそうになるのを、骸の肩を掴む事でとどまった。

「情けないですね、僕はたまに何故君を愛しく思うのか分からなくなってしまいます」

「骸こそ、よくそんなに平気で居られるな。信じられないよ」

「ええ、僕も君の事はよく分かりません。

君と僕は絶対的に違いますから。永遠にお互いを理解し合うなんて出来ないでしょうね」

顔色こそ変えないが、長い間一緒に居る俺には分かった、

骸は怒っている。

――…そうか、この状況、、

少しだけ似ている。
幼い頃の骸の記憶、それを俺は侵してしまったのだ。

謝ろうと口を開きかけた俺より先に、骸は微笑んで言った


「くふ、ふ。それでも僕は君が好きですよ。

理解出来ないからこそ」



可笑しいですか?と尋ねる骸に、俺は微笑する事で答えた。




とおくから誰かの泣きさけぶ声がきこえた、









みを
(好きってだけで中身は満ち足りるよ、)




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