呼びかたなんて、(阿部)


それはふとした時に気づいた。


「阿部っくんー、先生呼んでたよー」
「あ?ああ、どうも」


「阿部っくんー野球部の子来たよー」
「おー」


何故か無意味に小さい「つ」をいれて俺を呼ぶ。


「べっくんー」
「略し過ぎだろ!」
「おお、反応してくれた」


反応する、しねぇの問題じゃねぇって…!!
肩がふるふると震えだす


「お前は〜!!」
「まあまあ。廉が来たよ」
「あ、あ、阿部…っくん!あの、その…」


ぶち。


「言いたいことあんならさっさと言えっ!!」
「ひいいぃぃぃっ!!」
「あーもう!阿部っくんの馬鹿!そう言うから余計怖がられるんじゃない!で、廉はどうしたの?」


……三橋といい、こいつといい…ムカつく。


「ああ、阿部っくん、現文持ってる?」
「あ?お前のじゃダメなのか」
「私のは書き込み過ぎて余計廉が混乱しちゃうの」
「へー…」
「だから、あ、阿部っくん、貸して…ください…」
「そう縮こまるなって。ちゃんと貸すから」


鞄から現代文Tと書かれた少し厚い教科書を取り出した。


「ん」
「ありが、とうっ!」
「良かったね、廉」
「うんっ凉、ありがとうっ」


凉って言うのか
三橋と知り合いか?


「べっくん、」
「あ?」
「廉は幼なじみだからね」
「あ、ああ」


だから知ってるのか。
あと、名前の呼び方もわかった。三橋だ。
あいつから聞いてるならそう呼んでも仕方ない。
ん?仕方ない、のか?



呼びかたなんて
「べっくんー、今度練習見に行ってよい?」「あ、ああ。別に…」






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