急ぐ人々、止まる僕ら(暗→明)


最近受験受験と皆気が入っていた。
どうしてもそのぴりぴりとした雰囲気が馴染めない。
おしゃべりなんて、出来やしない。
休み時間の空気が重い。
静かにため息をついて、廊下に出た。


「…っ宍戸」
「よお。お前のクラススゲーなあ」


テニス部の宍戸亮がいた。
まぁ、部活は皆引退しているが。


「去年振り」
「おう。6限サボろうぜ」
「…いいよ」


宍戸は目を見開いた。


「真面目だと思ってたんだけどな」
「息抜きだよ」
「じゃ、行こうぜ!」


宍戸は嬉しそうに私の手をひいて屋上に繋がる階段を、少し早足に駆け上がった。


「宍、戸!ちょっと早…!」


私は肩で息をした。


「わりぃ!クラスの奴誘っても誰もサボろうとしてくれなかったら、つい嬉しくてよ!」
「もー」


最初は怒っていたが、すぐに笑いに変わった。
しばらく二人は笑い合った。


「あー久しぶりに笑った!」
「俺もだぜ!クラスの中スゲーぴりぴりしててよー」
「そうそう!もー耐えれない!」


すると宍戸の表情が穏やかなものになった。


「……凉に会えて良かったぜ」
「ん?」
「こう…重くなってた心がよ、一気に軽くなったっていうか」
「私もだよ。ありがと、宍戸」


6限が終わるチャイムが鳴った。
冬の夕方は一気に冷え込む。


「じゃ、私帰るね!」
「あ、凉!」
「ん?」
「一緒に、帰ろうぜ!」




急ぐ人々、止まる僕ら



あきゅろす。
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