手を伸ばせどもそれは掴めずに(切)


手を伸ばしても届かなかった
届いたと思ったら、君から離れて行く

小さかった頃には戻れない

わかってた


「…わかってたって…どうも出来ねぇんじゃ、ダサいだけだろ、俺」


『けどよ、宍戸と三枝木さんは幼なじみだろ?これぐらいの年になったら、普通離れて行くって』


「普通なのか」


ピンポン、ピンポン

とインターフォンが鳴った。
下に降りて、玄関のドアを開ける。


「どちら様…」
「あ…おばさんは?」
「買い物行った。上がるか?」
「…ううん。これ、おばさんに渡して置いて」


凉はタッパーを俺に渡した。


「タッパーは、いつでも返しに来てって伝えてね」


いつもの凉
けれど違和感があった
壁を作っている気がする


「おい」


とっさに凉の腕を掴んだ。


「何…宍戸」


呼び方まで変わっていた
何故?何故お前は…俺を、避ける、遠くする


「…俺たち、幼なじみ、だろ。名前で呼べよ」
「………ごめん、出来ない」


自然と掴んだ手の力が強くなる


「何で」
「…宍戸がわからないだけ」
「だったらわかるように説明してくれよ!!幼なじみなら」
「幼なじみだから!!」
「!?」


俺は掴んだ手を離した。


「幼なじみだから、辛いことだってあるの!もう親しくしないでよ!恋人でもないのに!!」




手を伸ばせどもそれは掴めずに
(そして君は泣きながら、帰って行ったんだ)(俺はわからないまま、ベッドに突っ伏した)




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