気づけ、バカ!(バレンタイン)

今日はバレンタイン。
それでも私の意中の人は、後輩の面倒を見に、部活に行く。むしろ、バレンタインと気づいていない気がする…。


「亮」
「おう、凉。お前もマネージャーしごきに行くのか?」
「違いますー。荷物を見てみろ」


亮は私が持っている紙袋を見た。


「あ?ああ!お土産か!」
「…………………バカ」


私は歩くスピードを早めた。


「は!?お、おい!」


ああ、ここまで意識してなかったなんて。


「テニスバカめ」


ぽそと呟いた言葉は亮には届かなかった。


部室前

「きゃあああ!跡部様!跡部様あ!」
「あ、あのバレンタインで」
「受け取ってくださいー!」
「ああ、ありがとよ」
「「きゃあああ!」」


部室前には跡部ファンが集っていた。


「あ?なんであんなに女子がいるんだ?」
「あのねぇ…」


すると、次は亮のファンがやって来た。私はすぐに部室入った。


「凉?」
「あ!宍戸先輩よ!」
「宍戸さーん!」
「は!?な、なんなんだよ!?」


亮は得意の瞬間移動で部室に入った。


「はぁっはぁっ」
「お疲れさま」

私はにこやかに亮を迎えた。
ちなみに部室はレギュラーとレギュラー専属マネージャー以外立ち入り禁止。


「お前…あれ、なんなんだよ!」
「さぁ?」
「いや、お前知ってるだろ!!」
「知ーらない」


あくまでもしばらっくれる私。


「……おい」


無視。


「おい!絶対知ってんだろ!」


亮が私の両肩を持つ。


「知らない」
「おい」
「あんたは知らなくていい」
「どういうことだよ」
「さぁ」
「またしらばっくれるのかよ」
「だって普通期待するもんじゃん」
「何を」
「………………チョコ」
「………チョコ?」
「今日はバレンタインなの!!女の子が好きな男の子にチョコをあげる日なの!!わかった!?」


肩で息をしながら、亮を見た。
亮はびっくりしていた。


「…バレンタイン」
「そうよ。さぁ、外行って来なさい!あんたが好きな女の子がチョコ持って待ってるわよ!」


私は亮の胸板を押した。
すると、肩に置かれていた亮の手が胸板を押す私の手首に移動した。


「な、何」
「お前のは?」
「は?」
「お前からは貰えねぇのかよ」
「な、な、…私より外!外行きなさいって!」
「別に外にいる奴は興味ねぇし」
「それでも跡部みたいに!跡部みたいに受け取るのが礼儀で!」


…………あれ?
なんか亮に押されてない?
形勢逆転というか。


「好きな奴以外に貰ったら変な期待されるだろ」
「……………ぇ」


待て。こいつ…こいつ…!?


「…無いのか?」
「う…ある。あるわよ。毎年のようにあげてるでしょ!」


すると亮はにかっと笑って


「よかったぜ!」


と言った。

何?これは自惚れさせる罠?

私は他の人とは違う包装紙を取り出した。


「ん」
「おー!なんか去年までとは違うな!」
「…」


だってさ、今年言おうって決めたもん。だから幼なじみは終わり。どっちに転んでも大丈夫。私が亮に近寄らなければいい。

亮はというと包装紙を開けていた。そして、トリュフを口に含んだ。


「形はいびつだけど美味いな」
「いびつは余計ですー」
「で?」
「え?」
「これ、本命?」
「は!?」
「他の包装紙と違ってるからよ」


………期待した私がバカでした。


「ほ、本命って言ったら!?」
「…付き合うか?」
「はぁ!?」


私はつい叫んでしまった。
こいつ…軽い!?そんな…!


「……正直言って、バレンタインはお前と身内しかもらってねぇから。今回は忘れてたけどよ」


亮は苦笑しながら私を見た。


「………これからも、もらってくれるの?」
「おう」
「………………私、さ。亮のこと好き」


亮はチョコを置いて、私を抱き締めた。


「言っただろ。好きな奴以外に貰ったら好きでもない奴に期待されるって」
「…言ったけど」
「その好きな奴がお前」
「ま、マジで!?」
「おう。…これからもよろしくな」
「えっと、…はい!」




気づけ、バカ!
(じゃ、あしらいながら部活行ってくる)(…やっぱり外の子可哀想)(なら、手繋いで外行くか)(は!?)




end.


あきゅろす。
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