signal(切)
それは合宿中の出来事。
「あ、タオル取り込まなきゃ」
凉が合宿先の庭に干していた洗濯物を取りに行こうとした時だ。
「あれ?亮と青学のマネージャー…さん?」
何故二人がいるのかわからなかったが、凉は幼なじみである亮をからかいに行こうとした。
二人は物陰に入って行った。
(何か怪しくない?)
脳が行くなと言っている。
しかし、
(考え過ぎだよ)
と凉はそっと二人の様子を見た。その瞬間、鼓動がいつもより強くはねた。
二人が抱き合っている。
いや、亮は手を回していないので一方的に抱きついているのだろう。
(わ、私だって抱きついたりしてるんだから、そんなに慌てなくても大丈夫!)
自身を落ち着かせるものの。
「紗羅…」
亮がマネージャーの名前を呼ぶ。
(見ちゃ、ダメだ…!)
一歩下がるとジャリと砂の音が鳴ってしまった。
「…っ凉!」
「え?」
「あ、あああのね!見てない!見てないからごめん!」
凉は洗濯物を取りに走った。
(見てない見てない見てない見てない見てない。私は見てないんだから!そうだよ、亮だって付き合ったりとかする年頃だもん!だから、私がどうこういう必要もないの!言いふらすなんて以ての外!だから私は見てない。見てないんだから!)
けれど心の奥から聞こえる。
『本当に見てないって思える?』
(幼なじみだけなのに)
「ただの、幼なじみなのに…!!」
『なら、なんで私は苦しいの?辛いの?』
「わかんない、わかんない…!」
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