嫌にも理由がある


「凉ちゃん、にんじんの皮剥いてー」
「え、あ、うん」


同じ班の子に渡されたにんじん。
凉は不馴れな手付きで剥いていく。


「へぇ、お前一応皮剥けるんだな」
「なっ亮!何がいいたいの!」
「別に。家ではやらないのになぁって思ってな」
「む…家でしない理由わかってるくせに」
「まあな」


それは小学校5年生の夏休み。おかずを一品自分で作ろうという宿題が出ていた。
凉はサラダを作ろうとした。


「きゅうりはこう切るの。わかった?」


母から包丁を渡され、見よう見まねでやってみるが出来なかった。斜めになるはずが、どうしても普通の丸になってしまう。


「違うでしょ!こう!」


母に教えられるが、それでも出来なかった。


「もういいわ!他のやりなさい」


挙げ句の果てには母にあきられた。

凉は夕食後、自室のベッドに横たわっていた。


「凉、凉ー?」


ベランダ越に声が届く。


「……何?」

窓を開けると亮がいて、笑って問いかけられた。

「夕方また怒られてたんだろ?今度はなーにやったんだよ」
「……っ料理なんかやりたくない…!」
「は!?」


そして今に至る。


「まあなー、子どもなりに頑張ってんのに『もういい』って言われると辛いよなぁ」
「…おかげでみじん切りのテストとか悲惨だったけど。よし、出来た」
「ん。いいんじゃねーの?」
「マジで?」
「けど、嫁に行くならもっと修行しないとな。ほら、よく言うだろ?男は胃袋を落とせって」


  ぷつ。


「一言多いわ!!!!」


凉はその辺りに散らかっていたゴミを亮に投げつけていた。




嫌にも理由がある
(暴力反対!)(うるさい!あんたには積年の恨みがある!)




end.


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