明日、目覚めたら(暗)
俺以外、誰も居ない部屋。
当たり前。
だってここは、俺の部屋だから。
でも前までは。
前までは、この部屋は、俺一人じゃなかったんだ。
眺めるカーテン。あの奥に、凉がいる。
幸せは、ぷつ…と儚く切れる。
「ごめん、別れよ…?」
何回、枕をベッドに投げつけたのだろう。
何回、その場で崩れて泣き叫んだのだろう。
今は、落ち着いた。
落ち着いたというより、枕を投げるのも、泣くことも、そんな気力がなくなっただけだった。
「俺が…傷つけた」
抱き締めたい。
いますぐにでも。
キスをして、二人一つになって。
ぽっかり開いた穴は未だに塞がらず…ただ君を探していた。
明日、目覚めたら君の顔を朝一番に見られたら。
「だせぇ…俺、本当に激ダサじゃねぇか…」
ゆっくり立ち上がって、カーテンを開けた。
凉は、勉強机に向かっていたが、俺の部屋の異変に気づき、振り向く。
「凉」
「……何?」
久しぶりに見た、凉。
「もし、お前の心ん中に俺が居たら、いつでも、来いよ!俺は、お前を待ってる…あ…いや、待ってるだけじゃダメだよ、な…。やっぱり…」
あー!もうわかんねぇ!!と言って俺は頭をがしがしと掻く。
「とにかく!待つのがつまらなくなったら、お前を再び惚れさせてやる!!」
真っ赤になりながら言った言葉は、凉に笑われた。
「何、それ…ふふっ」
「…凉?」
「そうだなぁ…。明日の朝、私の横に居てくれたら考え直してもいいよ」
俺は目を大きくした。
凉は、少しうつむいた。
「私は、私よりテニスが好きな亮が嫌だった」
ぽつり、と小さくしかし、俺にはちゃんと聞こえる声で呟く。
「本当は、別れたくなかった。……ごめんなさい。私の我が儘で振り回したりして」
もしかすると、あの別れの言葉は、今まで付き合って来た中で、彼女の最初で最後の我が儘だったのかもしれない。
「…窓の鍵は、開けて置くから」
それっきり、彼女は勉強机に向かったままだった。
「ありがとう、な」
明日、目覚めたら
翌朝(亮…)(はよ)(……おはよう)(もっと、俺に我が儘言っていいからな)(うん…)
end.
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