人波に消えていく貴方を見つめながら(服部)


「先輩、さよなら!」
「うん、さよならー」


凉は部活の後輩に別れを告げた。家まで、今目の前にある交差点を右に曲がって真っ直ぐ行けばすぐだ。
その曲がり角で、


「よう、凉」
「へ…平次!?なんで東京におんねん!?」


居るはずのない大阪の従兄弟が現れた。
東の名探偵と知られているだろう、彼の名は服部平次。


「でかいイベントがあったんや。まぁ、事件もやっぱり起こってなぁ」
「まさか、和葉ちゃんも?」
「一緒に居ったで?」
「和葉ちゃん可哀想」
「勝手に付いて来た奴が悪いんや」
「で?何しにここに来たん?」


家ならすぐ近くなのに、と一人ごちる凉。


「ああ、凉の顔を見に来たんや」
「またそんな冗談を…」
「冗談やないし。それにな、凉。俺はお前が好きやって何回言ってきたと思う?」
「聞こえてませーん、信じませーん」
「またかいな…あ、そろそろやばいな」
「あ…特急?」
「おう。じゃ、また会った時に返事してくれやー」


凉の進行方向の逆を進みながら、ひらひらと右手を振って、人波に消えかける。


「平次!!」


反射的に凉の口元が動いた。


「なんやー?」
「平次のバカー!!」
「なっ!?はぁ!?」
「はよせな電車間に合わんでー!!!!」
「おまっ…言われんでも間に合うように行くわ、アホ!!」


平次はすたすたと人波に紛れていった。


「…うちを見てくれて嬉しいけど、和葉ちゃんのことも気づかなあかんやろ…バカ平次」





人波に消えていく貴方を見つめながら
(本当は好きだけど、伝えてやんない)



end.


あきゅろす。
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