くびすじ(雅弥×椿)
雫が滴る髪をタオルで拭い、バスルームを出た椿は冷蔵庫を覗き込んだ。
鈴が分けてくれた自家製グレープフルーツジュースのピッチャーを取り上げ、リビングで寛ぐ恋人に声をかける。
「ねぇ、雅弥君もジュース飲む?」
「んー…、じゃあ頂きます」
返事に頷いて、グラスに二人分ジュースを注ぐ。
それを手にしてリビングに足を向ければ、此方を振り向いた彼が瞳を細めて微笑んだ。
「ありがとう」
「うん」
片方のグラスを手渡して、彼が座るソファーの対面に腰を下ろす。
グラスを両手で包み込んで口を付けると、同じくグラスを手にした雅弥と視線が合う。
「…?」
レンズ越しの視線。じっと此方を見つめている彼に、椿はゆるりと首を傾げた。
「どうしたの…?」
「…いや、どうしてそっちに座るのかな、って…」
言って、彼は一口だけ口を付けたグラスを、ローテーブルに置く。
(…ぁ)
視線を上げ、此方を見やったと思えば、彼はその指先で眼鏡を外した。
いつもはレンズ越しに見える黒い瞳が、真っ直ぐに椿を見通している。
その瞳はベッドの上で見せるのと同じ艶を纏って笑い、椿はそっと息を呑んだ。
「…おいで、椿」
「あっ…」
躰をずらし、雅弥は膝の上に椿を誘う。
細められた怜悧な瞳と艶やかな微笑に抗えず、椿は導かれるように年下の彼の膝に収まった。
するりと彼の腕が背に回り、椿はびくりと背を震わせる。
「…何、固くなってるの?」
「んっ、だって…」
黒曜の瞳を細める雅弥は、既に“スイッチ”がオンの状態だ。
椿が意識しているのは、鋭い彼にはすぐ分かるのだろう。指先で確かめるように首筋をなぞり、唇を近付けた彼の吐息が触れる。
「…こんな事されるかと思って、緊張した?」
「あっ…!」
吐息が触れた首筋に、チリッと軽やかな痛み。…すぐに浮かんだ筈の紅は、彼の網膜にしっかりと映っているのだろう。
震えた椿の耳に、いつもよりも低い雅弥の艶っぽい囁き。
「それとも……期待した?」
「ひゃっ…」
思わず身を捩ろうとしても、背中は彼の腕に拘束されたまま。
熱の上った頬に手を当てて、椿はその黒珠の瞳を見返した。
「……、雅弥の方がもう、本気なんでしょ?」
「…ふふっ、そうだね」
いつもはレンズに遮られたその黒が、艶やかに輝くのを見られるのは、自分だけ。
再び首筋に触れる感覚に酔いしれながら、椿はそっと瞳を閉じた。
くびすじにキス
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三周年記念、雅弥×椿編。…雅弥リミッター解除ver(笑)
えろではありませんが、そこはかとなく如何わしいですね! Sモードの雅弥はこんなカンジですw 孝雪と若干口調が被るww ←
10/12/20
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