ミッドナイト・プリンセス
疲れきったのか、腕の中でとろとろと微睡んでいた恋人が、不意に何かに気付いたようにガバリと躰を起こした。
「今何時…!? …っぅ」
「何? どうしたの、突然」
先程まで荒っぽく、執拗に愛した彼の躰。痛みに小さく呻いてシーツに沈んだ御門の赤く染められた髪をあやすように撫でてやりながら、孝雪は軽く半身を起こしてベッドサイドの時計を拾い上げた。
月明かりだけが照らす薄闇の寝室。けれど夜目の効く孝雪には、これだけの明かりで充分だ。
「…深夜一時を回ったところ、だね」
「うぁ…」
短針と長針を確認しながら応えると、片腕に抱えた躰が小さく呻いた。
…彼と恋人になって、暫し。睦み合いながら日付を跨ぐ事なんて、そう珍しくもない事なのに、どうして今日に限ってそんな顔をするのか。
「…?」
「……、アンタ、思ったよりも鈍いよな」
「いきなり何? そんなに可愛くない事を言う口は、塞いじゃうよ?」
きょとんとする孝雪を見上げる黒橡には、呆れの色。
いきなり恋人にそんな瞳を向けられる理由が分からず、眉を寄せながらも、先程まで甘く喘いで睦言を紡いでいた唇に口付けを一つ。
「んっ…!」
「…は…」
肌の下でくすぶる余韻に再び火を付けるような貪りに、御門がもがくように躰を揺らす。
その先の行為を制するように背を叩く手に、孝雪はわざとらしく糸を引きながら唇を離した。
「…なぁに」
思ったよりも低く、冷たく彼の肌を撫でるようになった孝雪の声に、御門の肩がビクリと震える。が、見上げる黒橡の瞳は揺らがない。
「……、誕生日」
「…え?」
ぽつり、呟かれた微かな声。この近距離で彼の声を聞き漏らす筈もないが、不意の台詞だった為に驚いたように蒼の瞳を見張った。
不意打ちを喰らったような顔で見下ろす恋人に、御門は呆れたようにため息を一つ。
「誕生日、だろうが、今日。…気付いたら日付越しちまってた…」
「あぁ……そう言えば」
1月9日、自分の生まれた日付。
言われて初めてそれが今日だったと気が付いたのでは、確かに恋人に呆れられる筈だ。
…そして、日付が変わる瞬間を気にしていたらしいこの可愛い恋人は、もしかせずとも日付の変わった瞬間に祝福を囁いてくれるつもりだったのか。
「その気持ちだけで充分だよ?」
「……、忘れてた癖に」
呆れたように呟く声。けれどもその顔は、ほんのりと恥じらいの朱に染まっている筈だ。
…先の言葉を促すように恋人の丹色をなぞると、ため息という名の恥じらい混じりの…甘やかな祝福。
「誕生日おめでとう、孝雪」
「…ありがとう」
今年一番に、愛しい彼からその言葉を貰えただけで、幸福だ。
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危うく今年も忘れるところだった…! ← 1月9日、孝雪誕生日おめでとうー!ww
ネタがないと、ただのベッドの上のイチャイチャになりがちな薄衣さんクオリティ ← だってイチャイチャ大好きなんですもの!(笑)
日付が変わる瞬間に言いたいなー、と思いつつ、流されちゃってハッと正気に戻った頃にはもう日付変更線の向こうな御門さんww 孝雪は自分の誕生日なんて面倒なので忘れてましたww
12/1/9
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