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ケース4:PM 5:30 フィン
『ねぇ御門! 聞いて聞いて!』
「…今度はお前か…」
友人たちに悉く騙され、若干ふてくされながら自室のベッドに寝転がっていた夕方。
テンション高く姿を現したのは、自身の使い魔である<ピクシー>だ。
使い魔でありながら非常にフリーダムな妖精は、頗る楽しげに手にした包みを掲げた。
『ねこさん着ぐるみパジャマが届いたわよ! 特別に御門サイズにオーダーメイドして貰ったの、素晴らしいわ!』
「はいはい……、は?」
胸を張ったこの妖精は…、もしかして本気じゃないだろうか。…いやいや、流石にそれは…。
「いやいや…、いくらなんでも俺に着ぐるみはキツいだろ…。…ってか今日4月1日だよな?」
『あら、御門用のオーダーメイドよ? 似合わない筈ないじゃない。4月1日? カレンダー見たら分かるわよ』
「…いやいや…」
マジだ、この<ピクシー>マジで言ってる。
カレンダーを見て首を傾げたフィンは、けれどすぐに御門に向き直ってにっこりと笑う。
『アクセサリーショップ“スズ”の限定品よ? レア物だし、クオリティは折り紙付き!』
「何かその名前どっかで聞いた事ある……、って鈴のネットショップじゃねえかそれ! アイツ何してくれちゃってんだよ!?」
『さぁ御門! 早速着てみて!』
「…ちょっ、待て……ぎゃぁぁぁ…!」
4月1日だろうが何だろうが、通常営業。相変わらずの使い魔に振り回される、エイプリルフール夕方。
ケース5:PM 11:20 孝雪
「…どうしたのそれ? 随分可愛いね?」
「…訊くな…」
日中は仕事で不在だった孝雪が訪ねてきたのは、もう夜も遅くなってからだった。
ちなみに今は部屋に鈴は居ない。夕食後に出掛けたようだったから、おそらく翡翠のところだろう。
結局フィンに無理矢理着せられてしまったねこさん着ぐるみパジャマを見てクスリと笑った孝雪に、御門はふてくされながら布団を被る。
「うっせぇ、見るんじゃねえよ馬鹿…」
「…可愛いのに…」
「馬鹿…」
クスクスと笑う声が耳にまとわり付く。御門は不機嫌半分、恥ずかしさ半分に小さくぼやいた。
潜った布団から頭を出せずに居ると、キシ、と微かにベッドが音をたてる。孝雪がベッドの端に腰掛けたのだろう。
そっ、と頭がある位置の布団の上に感触。おそらくこれは彼の手だ。
「ねぇ、御門…」
「?」
「…キライ、だよ。ダイキライ」
「…………」
小さな囁き。…声の柔らかさ、甘さが、全く正反対の意味を孕んだ外面だけの拒絶の言葉。
クスッと笑う孝雪の声に、御門はもそもそと布団から顔を出す。
甘やかに微笑むその表情を見て、御門はがばっとベッドから起き上がって彼に抱き付いた。
「御門?」
「……、何か、気が抜けた…」
散々友人たちにからかわれふてくされていたけれど、彼のベタなまでの嘘の甘さに何だか安心してしまった。
孝雪の肩に頬を埋め、はぁ、とため息を一つ。
…大好きの反対だからダイキライという、優しい甘い嘘。
そんな嘘なら、吐かれてもいいかと御門は小さく笑った。
卯月朔日、愚者は嗤う
(ぁ、そいえば俺、騙されてばっかで嘘吐くの忘れてた…)
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ちょっと遅くなりましたが、四月馬鹿SSでした!
騙され役は勿論御門。弄られ役に定評がありすぎますw 騙されるトコ書きやすかった(笑)
ちなみに愛紗のギプスは辰真に借りました、なんていうトリヴィアル(笑)
11/4/3
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