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ほっぺた(辰真×愛紗)

学生寮の共用スペースに備え付けられているものとは違う、お洒落な黒い革張りのソファーに腰掛け、愛紗は小柄な躰を気持ち縮こませる。


「…愛紗? ココアでいいか?」
「あっ、はい……、うん」


キッチンから此方を振り返る、見慣れた黒衣。反射的に返した言葉が敬語になってしまい、ふるりと首を振って言い直した。

彼らしいモノトーンのインテリアで統一されたこの部屋は、灯燈学園高等部の職員寮の一室、現在の辰真の私室である。

此処を訪れるのは初めてではないけれどそれ程頻繁ではないし、生徒が職員寮に入るという事に、…何より好きな相手の部屋だという事に毎回緊張してしまう。

ソファーの上で膝を抱える愛紗に差し出される、この部屋には似合わない、愛紗用のパステルブルーのマグカップ。


「…ありがとう」
「ん」


カップを両手で受け取ると、自分の分のカップを持った辰真は愛紗の隣に座った。

マシュマロの浮いたココアをじっと眺める。…彼の分は、匂いからしてブラックのコーヒーだろう。


(…大人、だなぁ…)


こんな些細なところでも、大人と子供の差を思い知らされるようだ。

恋人は、オトナだ。歳の差は、どうやっても埋められない。


「…愛紗?」


マグカップを手で包み込んだままぼーっとしている愛紗に、辰真が怪訝そうな顔をする。

彼にしては随分歯切れ悪く、愛紗は首を振った。


「ん、何でもねぇよ?」
「嘘つけ」


こつん、と軽く側頭部を小突かれる。

そんな戯れにもならない接触でも、とくんと小さく鼓動が鳴った。

ほんのりと頬の赤い愛紗を見て、辰真がクツクツと笑う。


「愛紗、頬が赤いぞ」


笑いながら、ちゅ、とそこに柔らかい感触。

驚いて振り返ると、柔らかく笑った辰真の優しい瞳がすぐ近くに。


「っ、え、……えっ!?」
「頬だってのに…可愛いな」
「うっ、ぇ、だって…いきなりだったから…!」


頬を押さえ、今度は耳まで真っ赤になる愛紗と、にやにやと笑う辰真。

ソファーの上でくすぐったい言い合いが始まる頃には、緊張感なんて消えていた。



ほっぺたにキス














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三周年企画、辰真×愛紗編。初めてカプらしい二人を書いたので、手探り感バリバリ(笑) 乙女な愛紗を模索してみましたw

大人と子供、歳の差カプらしいとこを、この二人は強調していきたいなぁと思いつつ、彼らについてはまだまだ模索中ですw


10/12/29

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