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一番近くにいてね

「おめでとう」
「…何がー?」


日付の変わった、その瞬間。ソースパンでミルクを温めていた背を抱き寄せそう囁けば、鈴はぱっちりとその飴色の瞳を瞬かせた。

ぎゅっと小さな躰に回した腕に力を込めると、すり、と蜂蜜色の小さな後頭部が胸に擦り寄ってくる。

下を向いて旋毛に軽く口付けると、彼はくすぐったそうに身じろいで笑う。


「…どうしたの、急に」
「分からないか?」
「んー…?」


温めたミルクをマグカップに移しながら、ゆると鈴は首を傾げた。

鈴の片手から自分の分のカップを受け取りながら、翡翠は今度は頬に口付けて笑う。


「鈴、今何時だ?」
「ん、0時になったところ…?」
「では、何日になった?」
「3月5日……あっ、そうか」


キッチンの壁に掛けられた時計を見ながら答えた鈴は、気付いたようで小さく笑って言った。


「…今まではお祝いしてくれる人って家族か、自称兄貴分くらいだったから、失念してた」
「鈴でも、“うっかり”するんだな」
「それはね。…翡翠の側なら、安心していられるし」


ふ、と笑った鈴は甘えるように翡翠に擦り寄る。

応えるように翡翠はその躰を抱き締め返し、改めてその耳元に囁く。


「誕生日おめでとう、鈴」
「…ありがとう」


耳元が敏感な鈴は囁かれるその声にこそばゆそうに躰を捩りながら、はにかむように笑って応えた。

とろりと甘く見上げてくる飴色の瞳に、けれど翡翠は少し困ったように笑う。


「……何を渡すべきか、実はまだ迷っているんだ」
「え?」
「鈴は、大概のものは自分で作れるだろう?」


ケーキだって、アクセサリーだって、鈴は下手な既製品よりも遥かに優れた物を自らの手で作ってしまう。

そんな彼に見合うだけの品を、実のところ翡翠は見つけかねていた。


「…だから、何が欲しいか訊いてもいいか?」


…ならばいっそ本人に直接訊いてみようかと疑問をぶつければ、鈴はゆるゆると首を振った。


「…欲しいものは、もう手に入れてるよ」
「…それは、」
「うん。…だって僕にはあったかい家族も、優しい友達もいるし」


それに何より…、そう続けた薔薇色は、精一杯つま先を伸ばして翡翠の桜色と重なる。


「…一番大好きな人は、一番近くにいてくれてるもの」
「…鈴」


ふふっ、と悪戯っぽく笑い、けれどその頬はほんのりと鴇色に染めて。

はにかむように笑った鈴こそ、翡翠にとっては一番大切な存在である訳だけれども。


「……抱き締めて、離さないで。…それが僕の、欲しいものだから」
「……あぁ」


ぎゅっと縋りついてきた小さな躰を、優しく、けれども強く抱き締めた。



…生まれてきてくれて、有難う。…もう一生、離さない















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3月5日、鈴誕生日おめでとう!
……去年はうっかりスルーしてしまった為、今年は何とかネタを出そうと絞り出したところ、案の定オチの無い糖度100%の話となりました!ι あぁぁ何だこれ/(^O^)\ ←

バカップルです、心置きなくバカップルです。…何かもう、一生やっててくれよ ←←


どうでもいいけど、身長差のあるカップルが後ろからぎゅっとやってるのは萌えますw ←
翡翠と鈴は大体身長差が25cmくらいあるので、翡翠が鈴を抱き締めたら鈴の頭は胸の辺りにくる筈ですw …うんww ←


→10.3.5. 薄衣砂金


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