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悪戯よりも、甘いお菓子

※ 未来(恋人)設定



「…そういえば、今日はハロウィンだね」


翡翠の膝の上に座ってもぐもぐとお菓子を頬張っていた鈴が、ふと思い出したように言った。

その小さな躰を優しく抱き寄せ、翡翠は柔らかく笑う。


「お菓子なら、そこにたくさんあるだろう?」
「うん。…Trick or treat?」
「クッキーでいいか?」
「ん」


思い出しついでに決まり文句を口にした鈴に、テーブルの上から摘んだかぼちゃクッキーをくわえさせる。…ちなみにクッキーその他の焼き菓子は、今朝方鈴自身が自室で焼いたものだ。


「…美味しいか?」
「うん」
「なら良かったな」


こくこくと頷く鈴の柔らかい髪を撫でれば、彼はコテンと翡翠の胸に背中を預けてくる。

すりすりと仔猫のように擦り寄る仕草は、甘えている証だ。

自身の髪を梳く形良い指先を眺めながら、飴色の瞳をくるくると瞬かせて鈴は言う。


「ハロウィンのイタズラって、どんなコトするのかな?」
「…さぁな? 鍋の中に蛙を入れたり、洗濯物を真っ黒にしたり、バスタブをナメクジでいっぱいにしたりか?」
「えっ、何それ?」
「何かの歌」


ナメクジは嫌だな〜、とけらけら陽気に鈴が笑う。

翡翠に躰を預けたまま、悪戯めいた瞳で彼を見上げた。


「Trick or treat?」
「…I'm scared」


答える声は、楽しげに。

翡翠はまたテーブルからお菓子を取って、その小さな口に入れた。鈴もまた楽しげに笑う。


「…鈴、」
「…? あっ…」


鈴がお菓子を咀嚼するのを待って、翡翠はその口元についたお菓子のカスを舐め取る。

ペロリと、赤い舌を態とらしく覗かせ、翡翠は甘く蕩けた瞳を覗き込んだ。


「…翡翠」
「何?」
「もっと…」
「お菓子を? …キスを?」


問掛ける声。それこそが、悪戯めいて響く。

けれどとろりと熱っぽく恋人を見つめる瞳は、迷いには揺れない。


「両方…」
「…ん、やるよ、いくらでも」


そっとキャンディをその唇に押し入れて、甘いお菓子を、貪った。



何より甘い、お菓子が欲しい










何だこの短くても濃密な甘々はっ!(笑) 無自覚バカップルから無自覚がとれると、とんでもない事になるんだと証明した翡翠×鈴編です ←

…おかしいなぁ、最初はこんな風に微えろちっくじゃなくて、もっとプラトニックな甘々のつもりだったのに… ←
本編の翡翠は相当に理性が強い(予定)んですが、鈴が自覚を持って甘えてきたらそんなの関係ねぇになるんですね(爆) 薄衣も初めて知りました(ぇ)


ちなみに文中で翡翠が言ってた『何かの歌』は某音ゲー曲ですよ(笑)


 →08.10.30. 薄衣砂金


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