悪戯魔女に、悪戯を ※ 未来(恋人)設定 「…………」 龍治は玄関のドアを開けたまま、無言で考えた。 目の前にいるのは可愛い恋人。…それは紛れもなく事実の筈だし、愛してやまない唯人が眼前で微笑んでいるのは、無条件に嬉しい。 …ただ、分からないのは。 「Trick or treat?」 その、格好だった。 「……何事だ?」 「見て分かりませんか? ハロウィンですよ」 ふわり、首を傾げた拍子に揺れたストレートの黒髪は、その肩を滑って流れた。 …今日学校で見た限りではいつも通り、唯人の髪は項にかかるくらいの長さだったと思ったのだが。 「ウィッグですよ?」 「…分かってる」 龍治の視線に気付いたのか、唯人が言った。…馬鹿にされた気がするが、龍治にだってそれくらいは分かっている。 分かってはいるのだが、趣旨は全く理解出来なかった。 「…とりあえず、何なんだ?」 「コンセプトは『見習い魔女』らしいですよ。…一応自分でも出来上がりは見たんですが、そんなに見苦しいですかね?」 見上げてくる黒珠の瞳を縁取る睫毛はいつもよりも長く、唇はふっくらと蠱惑的に赤い。 魔法使いの三角帽子の下からは黒髪のロングヘアが流れてて、裾の長い黒のワンピースは全体的にふわふわだ。 メルヘンと言うよりはゴシック的なそれだが、唯人には良く似合っていると思う。 「……いや、可愛いけど」 「そうですか? なら良かったです」 にこりと微笑んで、唯人はワンピースの裾を直した。 可愛い。…可愛いけれど、何故お前はそんな当たり前の顔をしているんだ。 龍治は片手でドアを押さえたまま、もう片方の手で額を覆う。 「…ところで、上がってもいいですか?」 「ん? あぁ」 そうだ、衝撃が大きすぎて忘れかけていたけれど、唯人は自宅を訪ねてきたところだった。 龍治が躰をずらして場所を譲れば、唯人はお邪魔しますと姿勢良く頭を下げた。 「…それで、龍治?」 「あ?」 勝手知ったる恋人の家と薬缶を取り出してお茶を淹れ始めた唯人は、リビングで寛ぐ龍治に首を傾げた。 「Trick or treat?、ですよ」 「…茶菓子の場所なら、俺より唯人の方が詳しいだろ?」 「…それじゃあ、ハロウィン的な情緒がないんじゃありませんか?」 ふぅ、拗ねたようなため息をつき、唯人は二人分のカップを持って龍治の隣に腰を下ろした。 カップを両手で包み込んで紅茶を飲む唯人を、龍治は片腕で引き寄せる。 「わっ」 「……“お菓子”がないから、“悪戯”をやるよ、“魔女さん”?」 「…えっ、それ何か趣旨が違いませんか?」 「コイビトなら、これが常識だろ」 目を丸くする唯人の顎を捉え、自分の方を向かせる。 インパクトに思わず固まってしまったが、なんだかんだ唯人の格好は可愛らしくて、煽情的だ。 …近付いてくる龍治に素直に瞳を閉じる唯人が、可愛くてたまらない。 「欲しいんだろ、『お菓子か悪戯』が。…好きなだけ、やるよ」 微かに唇を離し、その耳元で低く囁いた。 …悪戯っ子はだぁれ? ハロウィンという趣旨から全力でそれていった、ハロウィン企画龍治×唯人編です ← なんか龍治がキャラじゃない事喋ってますよ、なにしろ未来ですから!(爆) 恋人設定って甘々上等と同義語ですよねw ていうか唯人悪戯してないよ…!(笑) 何が悪戯魔女なんだw ちなみに唯人にコスプレ(笑)させたのは美唯さんです。…唯人が平然としてるのは、姉の腕を信用しているのと、それがあまりにも頻繁だから。実はしょっちゅうコスプレさせられてます、唯人は(笑) →08.10.29. 薄衣砂金 ≫ [戻る] |