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さて、シンデレラを乗せた馬車がお城へと向かっている途中、お城は煌びやかな舞踏会の真っ最中です。
鈴「わー、人がいっぱいだねー」
椿「だねぇ」
継姉たちがきょろきょろとどこか楽しそうな中、今日の舞踏会の主役である王子様は憂鬱そうでした。
翡翠「…孝雪、踊らないのか?」
孝雪「翡翠、隣国の王子である君は幼なじみの好みも忘れちゃったかな? …露骨な媚びを売ってくるような雌狐と、踊る気になんてなれないよ」
翡翠「………」
いっそ輝くような笑顔の王子様、台詞の後半は友人である隣国の王子様にだけ聞こえるように呟きます。
…黒いです。
孝雪「僕はちょっと反抗的な子の方が燃えるだよねぇ…。…僕だけに屈服させたくなる」
王子様はドSのようです。このぅ、その笑顔が眩しいわ!
翡翠「…まぁ、お前の趣味についてはもう、今更何も言わないが…」
孝雪「僕の事は放っておいてくれていいから、翡翠は気になった子と踊ってきたら?」
言葉の割に物凄く物言いたげな隣国の王子様に、ひらひらと追い払うように手を振る王子様。
隣国の王子様は諦めたようにため息を吐き、とりあえず王子様の側を離れました。
…と言っても隣国の王子様もあまり人の多い空間は好きではなく、適当なバルコニーに逃げ出します。
鈴「…あれー、お母さん? お兄ちゃ…いやお姉ちゃん?」
と、そこには先客が。きょろきょろとしているうちに継母と継姉Bを見失ったらしい、継姉Aです。
上背や体格が小さい事も相まって、その様は完璧に迷子の幼児。
翡翠「…どうかしたのか?」
鈴「あ、お母さんとお兄ちゃんがいないんです…」
さっきはギリギリで直したんに、面倒なのか何なんか、継姉Bをお兄ちゃんと呼んでしまう継姉A。
…まぁ、シンデレラの一人称も当たり前に俺やし、継姉Bなんか役作りする気すらなさそうなんやから、今更か。ゆるい劇や、ホンマ。
鈴「それを言っちゃおしまいよー」
翡翠「…ナレーターに話し掛けていいのか?」
それこそ今更やで(笑)
翡翠「………。…そうか、一人で大丈夫なのか?」
真面目で心優しい隣国の王子様は、迷子の子供(継姉A)を放っておけないようです。
優しく差し伸べられた手に、不安げにしていた継姉Aもにこりと笑みを浮かべます。
鈴「えへへ、心配してくれてありがとうございます〜」
その可愛らしい笑顔に、思わず見惚れてしまう隣国の王子様。
シンデレラよりも先に、此処にフラグが立ちました。
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