お母さんがナンパされました 〜長男の場合
朱が用事を済ませてベンチで待たせていた母の元へ戻ると、彼(母親だが、普段は“彼”だ)は二人組のややガラの悪い若い男に囲まれていた。
(あぁ、また…!)
三児の母だとは逆立ちしても信じられない程、若々しいというか幼い容姿をした鈴は、何故か昔から若干幼児趣味の入ったような男に気に入られやすかった。
父である翡翠と一緒に居る時になら絡まれる事はまずないが(並みの男が太刀打ち出来る筈もないほど、翡翠は美形だ)、ちょっと気を抜いて一人にするとかなりの高確率で絡まれる。…吸引力は全く衰えない、ダイ●ンの掃除機並だ。
朱は歩みを速め、鈴を囲むように立つ男たちとの間に割って入る。
「…ちょっと貴方たち、この人に何してるんですか!」
「……おっ、何この子? お嬢ちゃんの妹? …いや、弟?」
「すげぇ似てる…、こっちもカワイイじゃん」
威勢良く間に入ったというのに、男たちは全く動じる事なく、寧ろ楽しそうに朱を見た。
…髪と瞳の色を除いて、ほとんど鈴にそっくりな朱だ。カモが増えたようにしか見えないのだろう。
男たちの胸辺りまでしか身長のない朱を、彼らは至極楽しそうに捕まえる。
「ちっちぇ〜、カワイイ〜。俺、この子もイケっかも」
「…ちょっ、離しっ…!」
「ハハッ、イイ趣味してるよお前もっ」
朱を間に挟み、ゲラゲラと下品に笑う男たちに、無表情だった鈴がベンチから立ち上がる。
「…その手を離しなさい」
底冷えする、声。
それが目の前の蜂蜜色のものだとは信じられず、男たちは目を見張る。
「…何、お嬢ちゃん」
「…もう一度言うよ。離しなさい」
「…は…?」
飴色の瞳は、今は驚く程冷たく鋭利な光を宿し。
睨み据えるよう男たちを見上げるその姿に、普段のふわりとした印象は感じられない。
…本気モードだ。
「…ウチの子から、今すぐ手を離しなさい」
いつの間に持っていたのか、ロッド型の<魔法具>が、朱を捕まえている方の男の首もとに添えられる。
金属の冷たい感触に、男は僅かに血の気が引いた。
たかが子供とは侮れない空気が、今の鈴にはあったのだ。(…そもそも、鈴は“子供”ではないのだが)
「…あ、の…」
「僕の言う事、聞こえなかった?」
「…! すっ、すみませんでしたぁぁっ!!」
す、と飴色が細められたのを見て本格的に身の危険を感じた男たちは慌てて朱から手を離して去っていった。
…生存本能は、きちんと動いているようだ。
手から魔法具を消した鈴が、やや呆然としている朱の頭を撫でる。
「大丈夫だった? 朱」
「…お母さん…」
母を助けるつもりが逆に助けられてしまった長男は、『母は強し』という言葉の意味を身をもって深く噛み締めるのだった。
お母さんがナンパされた場合、長男編w
…朱は見た目鈴にそっくりなので、双子たちのように威嚇が出来ません。逆に絡まれ、キレた鈴に助けられる場合がほとんど(笑)
鈴は自分の事には大して頓着しなくても、子供の事なら容赦なくブチ切れそうですw 母は強しww
09/10/2
最後にその日の夜の瀧沢兄弟w ↓
「…今日、お母さんを助けるつもりがまた助けられちゃった…」
「またナンパ…? 私たち、この前も撃退したのよ」
「…てか朱、お前も絡まれたのかよ!?」
「…うん…。…やっぱ僕じゃダメなのかな…」
「うーん、朱兄さんも可愛いものね…」
「あー、俺がその場にいたらボコボコにしてやったのに…! 母さんのみならず、朱にまで手ぇ出すとは…!」
「琥珀…」
「…殺気がマジよ、琥珀…」
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