ディア,マイダーリン!
「…とっ、利也誕生日おめでとうっ! ぷっ、プレゼントは俺です、貰ってくださいっ!!」
ふわふわした可愛らしい服、首に巻かれた赤いリボン。耳まで真っ赤になりながらそう言い放った恋人に、思わず一時停止してまったのは仕方ない事だろう。
──…えっと、何事?
恥ずかしいのか、ぷるぷると微かに震えている明良を、呆然としながら見つめる。
「…えーと…?」
「……ッ、フリーズするのは止めろよっ! 俺だって恥ずかしいんだよっ!!」
栗色の猫目はうるうると潤んでいて、既に半泣き。最早やけくそなんだろう、叫んだ明良はぽふんと俺の腕の中に飛び込んで来た。
条件反射でその躰を受け止めつつ、俺は未だ呆然自失から抜けきらないまま訊く。
「…とりあえず…、誰の差し金だ?」
「…美唯さん…」
「…、あー…」
俺の胸に顔を埋めた明良は、くぐもった声で呟いた。
幾度か会った事のある、唯人クンのお姉さん。…なるほど、確かにこれは彼女が好みそうなシチュエーションではある。
やや戻ってきた思考で改めて明良を見下ろせば、ひらひらしたその服はメイド服である事に気付く。プレゼント結びのリボンが、朱を帯びた首元で揺れている。
えーと、なんと言いますか……、グッジョブ、お姉さん!
俺が内心で親指を立てると、ガバリと顔を上げた明良が真っ赤なまま言い訳を紡ぎ出す。
「だって、誕生日っていったらこれが定番だって…! これで喜ばない男はいないんだって、ムリヤリ着替えさせられて…!!」
「…あー、うん」
「…ッ、やっぱこんなの俺がやっても気持ち悪いだけ!? 俺なんかいらないっ!? ねぇ、利也!!」
涙目が可愛すぎて悶え、曖昧な返事となってしまった俺に何を思ったのか、縋るように訊いてくる明良。
…あーもう、ダメだ。可愛すぎる。美唯さん、ホンマグッジョブ!!
腕の中にいる明良をぎゅむっと強く抱き締め、溶けそうなくらいに甘く囁く。
「そんな訳ないだろうが。…メチャクチャ嬉しい」
「…ホント?」
「あぁ、俺にとっては、何よりのプレゼントだ」
「…よかった…」
ふにゃ、と笑顔になった明良の顎を捉え、真っ直ぐ俺の方を向かせる。
薄く潤んだ、仔猫の瞳。
「…プレゼント、好きにしていいんだよな?」
「………、ん、いい…よ」
真っ直ぐに俺を見て頬を染め、うっとりとした瞳が頷く。
…こんな形で祝われるとは嬉しい予想外だな、なんて思いつつ、俺は遠慮なくプレゼントにがっついた。
ベタ? 何とでも言いなさい。可愛いから何でもいいんだよ
--------------------
9月28日、利也お誕生日SSでした〜! 利也×明良は、べたべたなくらいがいいんですよっ!(笑)
美唯さんの被害者は唯人だけではありませんw 慣れてない明良は女装だけでも充分恥ずかしいんですが、利也に喜んで貰う為に持てる気力を総動員して頑張ったようですww
この後利也は、甘々なお誕生日を楽しんだ事でしょう(笑) おめでとう利也w
→09.9.28. 薄衣砂金
[戻る]
無料HPエムペ!