お母さんがナンパされました 〜双子の場合 とある街にある、一軒のCDショップ。 そこでCDを手に取り眺めている可愛らしい人に、青年は釘付けになっていた。 (…うわっ、この人結構タイプかも…!) ふわっとした蜂蜜色の髪と、くりくりとした飴色の瞳。小柄な躰は全体的に華奢で、歳は高校生から大学生程に見える。 華々しい美人という訳ではないが、素朴な可愛らしさが青年のストライクゾーンにクリーンヒットであった。 まったりとした雰囲気でCDを見ているその人の肩に、彼は手を乗せる。 「あの〜…」 「…はい?」 振り返ったその人は、パチリと飴色を瞬かせ青年を見上げる。…上目遣いが、彼のツボにがっつりとハマった。 俄かにテンションが上がった彼は、きょとんとした表情で見上げてくるその人にマシンガントークでたたみかける。 ナンパは勢いが大事である! 「今ちょっと時間ありますかね? あ、甘いものとか好きですか? この近くに美味しいって評判のカフェがあるんですけど、よかったら一緒にどうですかねっ?」 「え…と?」 青年の突然のマシンガントークにびっくりしたのか、飴色の瞳がぱちぱちと瞬かれた。 幾度か瞼が上下した後、少し困ったように首を傾げる。 「…あー、すみません今はちょっと…」 「いや、でもホントに美味しいトコなんで。ホラ、俺奢りますし!」 「あー…」 必死な彼の調子に何を思ったか、苦笑いの表情が浮かぶ。 困ったように首を傾げたその人が口を開くより先、青年のすぐ後ろから声がする。 「…母さん、何やってんだ?」 「…あ、琥珀。瑪瑙はどうしたの?」 「アイツはまだレジにいる」 交わされる会話に青年が振り向くと、そこには美形がいた。…艶やかな黒髪に黒曜石の瞳の、そりゃもう飛びっきりの美形が。 片手にCDショップの袋を持った琥珀と呼ばれた彼は、蜂蜜色のその人の肩に手を置く青年を見て、その形良い眉を思い切りひそめた。 「……母さん、ぼやぼやしてっから変なヤローに捕まんだぜ」 「…は…」 「えー、その言い方だと僕が悪いみたいじゃない?」 高校生くらいに見える琥珀の言葉に、『母さん』と呼ばれたその人は小首を傾げた。 …そんな姿も可愛らしい。けれど。 「え、母さん…?」 え、あだ名? 呆然と目を瞬かせる青年に、琥珀が淡々と言った。 「実母。…この人こう見えて、三人の子持ちだかんな」 「ウソだぁっ!!?」 どう贔屓目に見積もっても、20歳前後にしか見えない。こんな、高校生近い子供なんている筈がない! 思わず叫んだ青年に、未だに肩に触れられたままのその人はゆるりと首を傾げる。 「僕こう見えても、四捨五入したらもう40になりますよ?」 「えぇぇぇぇ!!?」 「…あら、人の歳を聞いて叫ぶなんて、失礼な人ね」 「!?」 衝撃が大きすぎて絶叫する青年に、第三の声がかかる。 振り向けば、琥珀に似た、けれど更なる華の美しさを持った蜂蜜色の髪の美少女。 「…私たちのお母さんをナンパなんて、貴方見る目はあるけど身の程知らずね」 「瑪瑙」 瑪瑙と呼ばれた彼女は、母より遥かに長い蜂蜜色を揺らしつつ、母の肩に触れる青年の手を思い切りつねりあげた。 「! いてててっ!?」 「…お母さんに触れないで頂戴、不愉快よ」 「…ったく、馬鹿が調子乗ってんじゃねぇよな…」 冷めた瑪瑙の言葉に同意するよう呟いた琥珀が、その美貌を険しめ底冷えする声で告げた。 「…さっさと散れ」 「! すっ、すみませんでしたぁぁっ!!」 脱兎の如くCDショップを出て行った青年をちらりと見、瀧沢家の双子は肩をすくめた。 一連の流れを当事者である癖に傍観していた鈴は、二人のため息にくすりと笑う。 「助けてもらっちゃった。ありがと〜」 「…あーもう、母さんは…」 「もうちょっと気を引き締めていて頂戴」 今年で11歳、実は小学生である大人びた双子は、いくつになっても若々しいというか幼い、35歳とはとても信じられない呑気な母を見て、疲れたように息を吐いた。 毎回毎回、気が気じゃない 家族のアイドル、鈴がナンパされた場合の散らし方、双子バージョン(笑) 美人双子なので、威嚇したらかなり迫力がありますw 鈴はいくつになっても超童顔(笑) 寧ろ老化してるんですか?、ってくらいに変わらないw …ちなみに律さんの血です。だからきっと朱も将来そうなるw そして、性別も不詳です(笑) 女のような男のような…、どっちつかずw ← 09/9/26 ≪ ≫ [戻る] |