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瀧沢家の日常(瀧沢兄弟)

「朱(あかり)、朱」


子供部屋のソファーの上で、弟が自分の名前を呼んでいる。

瀧沢家の長男、朱は母親によく似た容姿をぱちりと瞬かせつつ振り向いた。


「…琥珀(こはく)、兄さんを名前で呼ばない」


窓際のウッドチェアに座って本を呼んでいた瑪瑙(めのう)が顔を上げ、双子の兄の言葉遣いにチェックを入れた。

いちいち細かい片割れに、琥珀が煩そうに父親の生き写しとも称されるその美麗な容貌をしかめる。


「うっせえよ、瑪瑙」
「…瑪瑙、その台詞何だかお母さんみたいだね」


眉を寄せる琥珀に、澄ました顔を崩さない瑪瑙。そんな弟妹たちを見、朱は小さく笑う。

朱のその言葉に、瑪瑙は表情変化に乏しいその美貌を微かに綻ばせた。
兄弟たちの中でも一際母が大好きな彼女は、母みたいだと称されて嬉しいのだ。


「…じゃなくて、朱。ちょっとこっち来て」


四つ歳の離れた弟妹たちをほのぼのと見つめる朱を、瑪瑙から視線を戻した琥珀がもう一度呼んだ。今度は手招きつきだ。


「なぁに、琥珀。……わっ?」


呼ばれるまま彼の座るソファーへと近付けば、グイッと腕を引かれてそのまま弟の腕の中へダイブ。

四つも歳下とは信じられないほど発育の良い琥珀が、母に似て小柄な朱を抱き込んでしまう。


「…琥珀?」
「…あー、やっぱ朱抱き心地好いな。良い匂いする」
「……変態」


ギュッと抱き込んだ朱の項に顔を埋め、どこかうっとりと呟く琥珀に、瑪瑙の冷たい声。

朱はといえば、ぱちぱちと瞳を瞬かせるばかりだ。


「…んだよ、父さんだってよく母さん抱き締めてんじゃん。俺がやって悪い訳がない」
「…莫迦? その理屈、意味分かんない」
「………よく分かんないけど、琥珀、瑪瑙、喧嘩しちゃダメだよ?」


朱を抱き締めたまま瑪瑙に言い返す琥珀と、冷めた声で応じる瑪瑙。

小さい頃から仲が良いと同時に喧嘩も絶えない双子に、朱は兄としてそう注意した。…瑪瑙が肩をすくめる。


「…まぁ、朱兄さんがソレを赦してるなら、私は口を挟まないけど…」
「…別に嫌じゃねぇよな、朱?」
「嫌じゃない、よ?」


ただ、少し不自由だけれど。

朱がそう答えると、琥珀は気を良くして彼を抱く腕に力を込め、瑪瑙は軽くため息をついてまた読みかけの本へと視線を落とした。


「…なー、朱ー」
「なぁに?」
「愛してるー」


ギュッと自分を抱き締めそう言う弟に、それを「甘えているんだ」と認識した朱は、にこりと屈託なく微笑んだ。


「僕も大好きだよ〜」


…そんな中、琥珀の告白の意味を知る瑪瑙は、ページの文字を追いつつ今度は深く嘆息するのだった。



瀧沢家の、ある平和な一日












50万Hit企画、と称してなんかまたよく分かんない遊びが始まりましたよ! ← 七夕企画の時に書いた、“子供”がかなり楽しかったんですもの!(笑)

とりあえず子供たちの関係性を主軸に書こうとしたら、うっかり両親が不在になった ← …きっと同じ頃リビングでイチャついる筈ですw ←


琥珀×朱、で兄弟カプ……とか、かなり茨ですね! ← でも楽しい(笑) 見た目的には翡翠×鈴と変わらないのですが、性格と立場が大分違う、と。そんなんですw

他カプの子供たちや、両親たちもこれからちびちび絡ませていきますーv(笑)


09/9/19

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