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「お邪魔しまーす」
「お邪魔します…」


おそるおそる、といった態度の明良の手を引き、利也は家に上がった。

勝手知ったる相方のマンションなのだが、龍治の雰囲気がいつもと違う為か妙な緊張感を漂わせている。


「…唯人」


龍治が部屋の奥に向かって声を掛けると、真っ白なタオルを抱えた小さな影が出てくる。


「…ぁ、明良、利也さん。おはようございます」


そう言って苦笑いを含んだ表情で頭を下げたのは、せいぜい5、6歳程度の少年である。

利也はその姿を見て目を見開き、明良は状況が理解出来ないのかきょとんとしている。

しばしの沈黙。それを破ったのは、突如ガバッと龍治を振り向いた利也だ。


「……ちょっ、リュウ! お前どっから誘拐してきた!?」


動揺のあまりなのか、いつものエセ関西弁を軽く忘れ去っている。


「…してねぇよ」
「だってこんな小さい子、しかもそんなカッコさせて…! リュウがショタコンだったなんて知らなかったぞ!」
「人聞き悪い事言うな。俺は唯人だけだ」


ビシッとミニマム化した唯人を指差して言う利也に、真顔で返す龍治。論点が微妙にズレている。

そんな会話に軽く頭を抱える唯人を、パチパチと瞳を瞬かせた明良がじっと見つめる。


「……唯人?」
「…こんな見た目ですが、そう、ですよ」


確かめるように訊いてくる明良にため息まじりに苦笑を返せば、彼は栗色の猫目をくるくると輝かせた。


「…っ、可愛いー! 小学生の時の唯人だぁ〜!!」
「!? ちょっ、明良!?」


パッと表情を輝かせたと思えば、素早く唯人に飛び付いてきた。

龍治のような恋人の熱い抱擁ではなく、小さいものを愛でる軽いハグ。くりくりと小さな唯人の頭を撫で回す明良に、龍治と利也が言い合いを止めて目を丸くした。


「え、やっぱマジで唯人クンなんか?」
「…離れろ、其処」


信じられないと言うような利也と、唯人に抱き付く明良を睨む龍治。

綺麗なもの、可愛いものを愛でたがりの明良は、幼くなった唯人がいたくお気に召したらしい。ハシャいで頭を撫でている。


「わー、ホント昔のまんま。ちっちゃい唯人可愛いなぁ〜、懐かし〜」
「…とりあえず一度離して下さい、明良。龍治に殺されますよ」
「え………、ふぎゃぁぁっ! すみませんでした、久籐先輩っ!!」


軽く抱き付かれているので苦しい訳ではなかったが、後ろの人たちのオーラが恐ろしい。

唯人が明良にそう指摘すると、振り向いた彼はすぐさま悲鳴を上げた。…チキン属性は変わらず健在である。

ダッシュで利也の影に隠れ、言い訳だか何だかわからない呟きを漏らす。


「うっうぅ…、だって小さい唯人可愛い…」
「そうだな、可愛い」


そこは同意するのか、龍治。恋人馬鹿にも程がある不良である。


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あきゅろす。
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