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* * *



隠れんぼに、だるまさんが転んだ、缶蹴り、かごめかごめ、…エトセトラ。どうせなんだからみんなで遊べるレトロな遊びで!、とは鈴の弁だ。

最初は朱が楽しめるように、などと子供に付き合ってあげるつもりでいたものの、いつの間にかすっかり童心に戻って楽しんでしまった男子高生たちである。

四歳児にしては朱はとても賢く、隠れんぼでは最後まで見付けられずに鬼の椿を半泣きにさせてしまっていたくらいだ。流石学年首席の翡翠と鈴の子供といったところか。

途中おやつ休憩を挟んだとはいえ、日が暮れるまで遊び続けた彼らは茜空にうーんと伸びをした。


「疲れたねー、もうすっかり夕方だ」
「あー、こんなにハシャいだのいつ振りだろーな?」
「愛紗はいつでもハシャいでる気がするけど?」
「雅弥テメー、やんのかコラ!」
「喧嘩すんなよ、お前ら…」


無邪気な一年生組を微笑ましく見守りつつ、先輩組も手についた泥を払った。


「思った以上にエキサイトしたねぇ…」
「…そうだな」
「寧ろ、小さい頃より夢中で遊んじゃったね…」


遊びの中核となっていた朱はと言えば、遊び疲れたのか翡翠の背中に背負われてすやすやと寝息をを立てている。

そんな様子を見て、鈴が騒ぐ同級生の輪から抜けてそっと翡翠の隣に並んだ。


「朱くん、寝ちゃったね」
「そうだな」
「…未来は毎日こんな感じなのかな、“おとーさん”」
「あぁ、そうだといいな」


背負われた幼い寝顔は本当に安らかで。“未来”が倖せである事を示しているようで、胸がいっぱいになる。

鈴が翡翠を見上げると、彼は優しく微笑んで返してくれた。


「……うん」
「ん?」
「今の僕も倖せだけど、未来の僕も倖せなんだよね」
「あぁ」
「未来の翡翠も、倖せだよね?」
「当然だ」


可愛い子供も、妻も居るからな、と翡翠が言った。鈴は照れくさくなって小さくはにかむ。

いつもならこの辺りで翡翠は鈴の髪を撫でてくれるのだけれど、今日は朱を背負っているのでお預けだ。


「朱くんは、未来から僕らに『倖せだよ』って言いに来てくれたのかな…?」
「なのです…」
「朱くん?」


翡翠に背負われた小さな躰の瞼が開く。翡翠と同じ、黒曜石の瞳。


「おかーさんが、ゆってたのです。いまも、むかしも、これからも、ずーっとしあわせだ、って」


幼い声。けれどその小さな唇が紡ぐ言葉に、涙が零れそうになる。


「…朱くん」
「おとーさんおかーさん、だいすきなのです。ボクがうまれるまえからも、だいすきなのです…」
「ん、ありがとう」


朱を背負った翡翠の背中ごと、鈴は愛しい存在を抱き締めた。
…自分も、生まれる前から彼が大好きだ。

鈴に抱き締められた翡翠が足を止める。仲間たちがそれに気付いて少し離れた場所で足を止めたが、雰囲気を察したが近付いては来ない。


「…おゆうはんをたべたら、かえるのです。しあわせな“いま”へ」

――未来へ。倖せの時間軸は、ずっと継続している。


「うん。…また、ね、朱くん」
「また、“みらい”でまってるのです」


幼い顔が、ふにゃりと笑う。

目を細めた鈴を抱き締め返せない翡翠は、少しだけもどかしく思った。

…けれど、倖せだった。



それはきっと、今も昔もこれからも。ずっと










そんな訳で、七夕企画スメラギ編でした! 七夕欠片も関係ねぇよ、っていう!w ←

ホントは朱が帰るトコロまで書きたかったのですが、残念ながら時間切れです(^^;) 文字数の問題で描写も大分簡略化しちゃったし…、うーん何がやりたかったんだか(笑) 鈴に「おとーさん」って言わせたかったのか(爆)


本文中で殆ど描写出来なかったですが、朱は一応男の子です。容姿は鈴似、髪と瞳は翡翠似、何故かなのです口調の不思議っ子です(笑) 性格は鈴属性w


未来の他カプにも子供が出来てても面白そうだよねw ←


 →09.7.9. 薄衣砂金

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