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可愛い子供が出来ますように!

ある朝。鈴と翡翠が目覚めてみると、ベッドの上に小さな子供が居た。


「はじめまして、ちいさいおとうさんとおかあさん。ぼくはたきざわあかり。しゅいろのしゅ、ってかいてアカリ、です」

「「…はい?」」


…何ですって?


ペコッと小さな頭を下げた子供は、まだ幼児と言って差し支えない程の年齢に見える。三歳か四歳、…もう少し下にも見えるが、それにしてはしっかりしている。

漆黒の髪と瞳、上げた顔立ちは鈴に良く似ていた。

寝起きの二人はぱちぱちと瞳を瞬かせ、「朱(あかり)」と名乗った子供を見る。


「えーと……、ごめん、もう一回言ってくれるかな?」
「はじめまして、ちいさいおとうさんとおかあさん。ぼくはたきざわあかり。しゅいろのしゅ、ってかいてアカリ、です」
「……おとうさんと、おかあさん」
「…俺たちが、か?」
「はいっ」


ニコッと幼児らしく無邪気に笑う朱だが、二人はあまりの唐突さに頭がついていかない。

とりあえず、今の所子供を生んだ記憶はなかった筈だが。

鈴はベッドから躰を起こし、朱の小さな躰を膝に乗せた。


「えっと…、コウノトリに乗ってやって来た…とかかな?」
「? ちがいます。おかあさんがおくってきてくれました」
「おかあさん…、って鈴の事か?」
「そうだけど、そうじゃないです。ちいさいおかあさんはむかしのおかあさん。おくってくれたのはいまのおかあさんなのです」


幼い割に、ハキハキと良く喋る子供である。無邪気な笑みに見え隠れする利発さは、確かに鈴を彷彿とさせるそれではある。が。

…昔とか、今とか。この子の言う事はつまり…?


「…未来から来た僕らの子供…、って言いたいの…?」
「ですっ」

「「えぇぇぇ〜〜〜〜っ!!??」」


改めて、朝の寝室に絶叫が谺する。

青天の霹靂は、こうして落とされた。



* * *



翡翠と鈴が一頻り驚愕した後、朱が可愛らしく「おなかすいたー」と主張した為、とりあえず詳しい話は追々と鈴は朝食を作りに出た。

食卓を共にするいつもの面子が顔を揃えた頃、朱は翡翠の膝の上で元気良く彼らに自己紹介した。


「たきざわあかり、よんさいです。なまえはしゅいろのしゅ、でアカリです。おとうさんのなまえはたきざわひすい、おかあさんのなまえはたきざわりん、なのです!」
「おー、上手な自己紹介だなぁ………ってはいぃぃ!?」
「翡翠、いつの間に隠し子なんか…」
「…それはこれから考察する…」


それぞれに驚愕されるが、翡翠自身もまだ状況を把握しきれていないのだ。

朱の言う事は色々と有り得ないし、もしかしたら全部夢なのかもしれない。…ただ、膝の上に乗る子供の感覚はとてつもなく現実的だが。


「たっまご、たっまご〜♪」


お子様フォークで玉子焼きをつついている朱は、ご機嫌そのものだ。

その世話を焼く鈴と面立ちが似ている為、その様はまさに母子…と言うよりは兄弟か。


「…なんつーか、違和感無いのが逆に違和感ってか…」
「…本当に二人の子供…?」
「本人曰く、未来から来た、らしい」
「…ん?」


鈴に口元をナプキンで拭われていた朱が、こてっと首を傾げた。鈴の仕草と全く同じである。


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