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この愛は両手くらいでは抱えきれないものです

「はい、明良。誕生日おめでとう」
「……え」


自宅の玄関で大好きな恋人を迎え入れた明良は、ドアを開けると同時に差し出された物を見て思わずフリーズした。

秀麗なその容貌に映える、百本近くはありそうな深紅の薔薇の花束。

…薔薇の、花束。はい、大事な事なので二回言いました!


「…利也…?」
「どうした?」


え、何それわざと? わざとなの?

猛禽類を思わせる切長な鳶色の瞳を今は軽く瞬かせ自分を見下ろす利也に、明良は思考が上手く回らなくなってしまった。

微妙な表情とドアを開けたそのままのポーズのまま、彼と彼の抱えた花束を見て固まる。


「……、ゴメン、これは流石に冗談だから。そんなイイリアクションされると此方も困る」
「…あ、うん…」


石化する明良に苦笑いし、利也はその栗色の髪をくしゃくしゃと撫でる。
いつも通りの彼の仕草に、明良もまた強張った躰の力を抜いた。


「まぁ、一応持ってきた以上は受け取ってな。花に罪はないし」
「うん…、でもコレ心臓に悪いよ……」
「だから悪かったって」


苦笑いする利也から花束を受け取り、明良はそれに顔を埋めるように腕に抱えた。華やぐような生花の芳香が、ふわりと鼻孔を擽る。

何が心臓に悪いかって、あまりにもそのアイテムが彼に似合い過ぎていた事だ。悪い冗談にしては、絵になり過ぎていて怖かった。

…つまるところ、明良は彼に見惚れてしまった訳だ。彼には内緒だが。

大きな花束は持ち歩くには些か邪魔な為(よく彼は此処まで持ってきたものだ)、明良はリビングにいた母にこれを預けた。

母もまた一瞬リアクションに困ったような顔をしたが、ちゃんと後で花瓶に入れて部屋に飾ってくれるらしい。…嬉しい…ような、微妙なような。…彼に貰った物だから、嬉しいけれど。


「赤い薔薇の花言葉って知ってる?」


自室のある二階への階段を上りながら、利也が言った。

明良の方が一段上を上がっているから、振り返ると元々身長差のある彼との距離が近い。


「知らない、けど」


思いがけず近い距離にドキリとしながら、明良は彼の問いにゆるゆると首を振った。

花言葉なんて、高校一年生の男子には普通興味もないし、知っている必要もないものだ。華道もたしなむ親友の唯人なら或いは知っているかもしれないが、自分は知るよしもない。

そう言うと、彼はクスリと笑った。


「俺もこの前調べたんだけどさ」


そこで一度言葉を切り、利也は明良の耳元でそっと声を落とす。


「熱烈な恋、だって。……まぁ、俺の熱はあんなモノじゃ足りないけど」
「…っ!?」


耳元で囁く様な、低く甘い声色。

思わず躰を揺らした明良の腰を、後ろから回された利也の腕が支える。


「……誕生日にかこつけて、俺の愛を全部あげるから」
「ぁっ…ぅ…」


覗き込まれた瞳にたじろぐ明良に、利也は噛みつく様に口付けた。



さぁ、覚悟しなさい? 愛はこれくらいじゃ足りないよ










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明良誕生日おめでとう! …一日遅れてゴメンね、16日です誕生日は(^^;)

何が誕生日祝いなのはよく分からないSSですね(笑) 薔薇の花束な利也さんが頭から離れなかったんだ ←

誕生日にかこつけて、色々しちゃう利也さんと、色々されちゃう明良くんw
…あれ、これホントに誕生日祝い?(爆)


→09.2.17. 薄衣砂金



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