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short
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「お待たせー」
「あぁ、出来たのか」


僕の声に一度参考書を閉じた惣が振り返る。テーブルの上はまだスペースが空いてるから、そのままでも大丈夫だったんだけど。

小さく笑って僕は、クッキーの盛られた皿をコーヒーカップの横に置いた。


「甘いのと、甘さ控えめなのと二種類。良かったら、どっちがコーヒーに合うか感想ちょうだい。……コーヒー無くなりそうだったら、こっそりお代わり持っていくから」
「あぁ。……次いったら、もう三杯目だけどな」


中身の減ったカップを持ち上げながら、惣は向かって右側の甘い方のクッキーを摘んだ。丸く型の抜かれたそれを、サクリと軽い音をたて囓る。


「ん、サクサクだな」
「焼きたてだからね」


食べながら小さく微笑みかけられて、思わず照れ笑い。

改めて見ると、惣は結構綺麗というか格好良い顔立ちをしてるんだよなぁ。背も高いし、羨ましい限りだ。

焼きたてのクッキーをコーヒーで流し込み、惣は今度は反対側の甘さ控えめのクッキーに手を伸ばす。


「ん、さっきのの後だと、全然甘く感じないな」
「砂糖の量、さっきのの半分くらいだからね」


その他の材料や焼き加減は同じだから見た目はそんなに変わらないクッキーだけど、甘さは随分と違う。

二枚目のクッキーもコーヒーで押し流すと、惣は此方を見上げた。


「どっちも美味かった。……そうだな、コーヒーには甘い方が合うかもな。ただ、甘いのが苦手だからブラックコーヒー、って奴も居るだろうし、甘くないのも悪くはないと思う」


二つ目になる甘いクッキーを摘み、惣は案外真面目に感想をくれた。

ふむふむ、やっぱり味は強めの方がコーヒーとの相性はいいのかな。でも、クッキーの風味がコーヒーの香りを殺しちゃったりしないかな? 其処はマスターに聞いてみようか。


「ありがとう。……あ、次のお代わりはサービスにしとくね」


ナイショだよ。と声を落として言うと、惣は小さく口角を上げた。

よし、それじゃあ他のお客さまにもクッキーを配って来ないと。

僕がお店のバッグへ取って返すと、いつの間にかマスターがお客さまに出すクッキーを荒らしていた。


「ちょっと、マスター! そっちはお客さまに出す方!」
「あ? 俺のは?」
「マスターのは別皿……だったけど、もういいです。そっちを盛り直しますから」


一応、マスターの分は一つだけ皿の種類を変えておいたのに。どうやら気付かなかったらしい。まったくもう。


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あきゅろす。
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