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携帯電話をパチンと閉じた静は、涙目のまま此方を窺っている春氷の頭をよしよしと撫でた。


「風紀からも何人か回してくれるって。人海戦術で捜そう」
「ん、ありがとうせーちゃん! イインチョさんとよろしくやっといて!」
「うん…あれ、今何か変じゃなかった?」
「違った、よろしく言っといて!」


漫才のようなやりとりに横で見ていた暁はツッコミを入れたくなったが、春氷の様子は限りなくマジだったので寸でで堪えた。彼は天然だ。

ともかく、春氷の愛娘…白蛇のミズチの捜索が優先事項である。


「とりあえず、行くぞ」
「ミズチが遠くまで行かないうちにね」


彼らは春氷がミズチとはぐれたという、学園の敷地内にある森の中へ移動した。

人海戦術、という事でそれぞれ手分けをして捜す事にする。


「……しかし、俺には心当たりは全く無いからな…」


大体この辺りではぐれた、と春氷が語った場所から東側のブロックを受け持つ事になった暁は、ぼやくよう呟きながら周囲を見渡した。

飼い主である春氷ならば違うのかもしれないが、素人の暁にはあの白蛇が向かいそうな場所、好みそうな場所などは皆目見当も付かない。

地面を捜すのか、それとも木の上など高い場所を捜した方が良いのか。…せめてそれくらいは春氷に訊いておくべきだったな、と暁は頭を掻いた。


「…まぁ、なるべく隈無く捜すか…」


いつも飄々しているあの春氷が、あんなに泣きそうな顔をして取り乱していたのを見ては、放ってなどおけない。

早く彼の可愛がるペット見付け、いつもの春氷に戻してやりたい。出来る事なら、彼にはいつも笑顔で居て欲しいと思うから。

………。


「………、いやいやいや…」


暁は自らの思考回路に、思わず首を振った。

これではまるで、自分が春氷の心配をしているようではないか。いや、確かに心配なのだが、それは彼が自分に気兼ねなく接してくれる数少ない後輩だからで…。

誰に言い訳しているのか、暁は一人ぶるぶると首を振る。

その様は、静が見ていたなら再び呆れのため息を吐かれただろう光景だが、幸い彼の周りに人影はない。


「ないない……、ない…よなぁ?」


誰に話しかけるでもなく、ただ自分に言い聞かせるように呟き振り返る。

と、不意に視界の端に白い影が映った。

白。…白い鱗。白い蛇。


「…いた!?」


ハッとして暁は振り返る。がさりと草むらが揺れ、顔を出したのは白い蛇。


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