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short
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「ミズチが……」
「…うん、まぁ君がそんな慌てるくらいだしペット関連の何かだろうって予想はしてた」


その第一声に静は思わず苦笑してそう漏らしたが、当の春氷は至って真剣だ。グスッと鼻を啜り、言葉を続ける。


「…ミズチがっ、小鳥を捕まえようとして、森の中で迷子になっちゃった…!」
「森……って学校の? それって色んな意味で結構大変じゃない!?」
「大変なんだよ! 天敵に襲われちゃうかもしれないし、あの辺宮地センセーがうろうろしてるし、…もしかしたら戻って来られないかもしれない……うゎぁぁぁん、ミズチー!!」


声をあげて泣き始めた春氷と、そんな彼の話を聞きおろおろとし始めた静に、端で聞いていた暁は顎もとに指をやり考えながら訊く。


「……、見失なったのは何時、どの辺りでだ?」
「…ぁ、かいちょ…」


顔を上げた春氷は、暁の顔を見上げながら呆然と呟く。

…このリアクションは、今まで暁の存在には気付いていなかったのだろうか。そうだとしたら若干悲しいが、涙目の上目遣いの威力に何も言えなかった。

目尻に溜まった雫を静が指先で拭ってやり、春氷は一つ息を吐いて応える。


「…時間は10分くらい前、裏庭のベンチがあるトコの近くでです…」
「…なら、そんなに遠くまでは行っていない筈だな…。…よし、人海戦術で捜しに行くぞ」


瞳を瞬かせる春氷の肩をぽん、と優しく叩き言う。

ぽかんとする春氷よりも先に我に返ったのは、彼に腕を掴まれたままの静だった。


「そうだね、一人よりみんなで捜した方が早く見付かる。…ある意味緊急事態だし、風紀からも人を回せないか頼んでみるよ」


言いながら静は携帯電話を取り出し、短縮ダイヤルからある番号を呼び出した。

数コールで出た相手に挨拶もそこそこ、要件を話し出す。


「──…だから、春氷の蛇が迷子になっちゃってね。……うん、毒は一応ない。でも、色んな意味で危ないし、…森の中だとなかなか見付からないかもしれないから。……そう、最低限動かせるだけで大丈夫だけど、もし風紀で手が空いてる人がいたら……」


電話の相手は勿論、静のダーリンである風紀委員長だ。

委員長直々の御参加なんか望んじゃいないが、風紀の下っ端数人でも貸して貰えると助かる。
本当は親衛隊員が駆り出せればいいのだが、捜しものに悲鳴を上げて逃げ出してしまいそうな人材ばかりなので、今回は悪手である。


「──本当? ありがとう…! 助かるよ、…ごめんね忙しいのに。……うん……うん、それじゃあ…お仕事頑張って」


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あきゅろす。
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