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「どういう事だ? どうしてそういう話になった?」
「さっきも言ったじゃないですか、ウチの隊の子たちが無茶しないようにですよ」
「いやいや…。…そもそも、何か誤解を含んだ前提の元で話を進めてるだろ」
…彼の物言いではまるで、自分が春氷に懸想しているようではないか…。
知らずその頬を仄かに上気させながら言った暁に、静が目を見張る。
「…え、ちょっと勘弁して下さいよ。貴方ともあろう方が、無自覚鈍感とかシャレになりません」
「…いや、おい…」
「ただでさえ、春氷は無自覚朴念仁な上、ペット至上主義で、個としての人間には興味が薄いんですよ? 貴方から積極的にアピールしないと、何もかもが始まりません!」
ビシッ、と静の人差し指が眼前に突き付けられ、暁はその迫力に思わず言葉が出なくなった。
グイ、と冷めかけた紅茶を飲み干した静は、呆然としている暁に畳みかけるように続ける。
「無邪気に笑いかけてくる春氷に、可愛いなー、なんて思った事はありませんか?」
「え、…あー…」
「一緒にいて、癒やされるってか、落ち着くんでしょう?」
「…まぁ…」
「先輩ならミズチのお父さんにいいと思った、って聞いて正直ドキッとしたでしょう!」
「…ちょ、何でその台詞を知ってる!?」
ピンポイントで指摘してきた静に、露骨に動揺してしまう。これでは図星だとバレバレではないか。
……、あれ、やっぱり図星なのか?
自分で自分が分からなくなる程混乱した暁に、静がふんと鼻を鳴らす。
「ほら、ね?」
「いや、…いやいや」
往生際悪く首を振る暁に、静がまた何か言い募ろうと口を開きかけるが、突然の乱入者の叫びにかき消される。
「──うわぁぁん、せーちゃぁん!!」
「春氷っ!?」
「っ!?」
ガラッとドアを引いて部屋に飛び込んできたのは、件の百瀬春氷その人。
珍しく酷く動揺した様子で、彼は一直線に静にしがみついた。
その瞳に光る透明な雫に、横で見ていた暁は思わずドキリと心臓が高鳴る。
「どうしたの春氷、そんなに慌てて…」
「ふぇっ、せーちゃん…」
いつもの飄々とした様子はどこへやら、弱ったように眉を下げ、瞳を潤ませ上目遣いに静を見上げている。
しがみつかれているのが自分で、真っ直ぐ此方を見てやられていたらヤバかっただろう……って、何がだ!
「何があったの、話してごらん?」
「うー…」
真横で暁が一人葛藤している事など知らず、春氷は静に頭を撫でられ、自分落ち着かせるように深呼吸している。
静に背中をさすられ、はぁ、と一つ深く息を吐き出した春氷は、顔を上げて口を開く。
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