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short
傍観者と愛娘捜索隊

「なんかもう、くっ付くんなら、さっさとくっ付いて貰えた方が助かるんですよね」
「…は?」


ため息混じりにそう切り出したのは、巨大な規模を誇る生徒会親衛隊を統括する親衛隊総隊長、藤原静。

そしてそんな彼の唐突な言葉に目を見張ったのは、桜苑学園の誇る眉目秀麗の生徒会長、間宮暁だ。

此処は親衛隊幹部たちの使う多目的教室、通称お茶会部屋。

学園内の様子を知る為にと自ら此処へ顔を出した暁に、静がとりあえず紅茶を出した次の一言である。

時間帯の問題なのか、現在この部屋には暁と静だけ。…普通ならば崇拝対象と親衛隊員が二人きり、などといった状況は色々と物議を醸し出しそうだが、この二人に限ってはそういった邪推など無用だ。静に恋人が居る事は、この部屋に出入りする幹部なら誰もが知っている。

と言う訳で、この状況に特に問題はないのだが、何故か据わった目をしてそう言った静に、暁はうっすらと言い知れぬ恐怖を感じた。

…何もしていないのに思わず「ごめんなさい」と謝ってしまいたくなるような雰囲気を、今の静は纏っている。

しかし、其処は学園を率いる生徒会長の意地と沽券、訳も分からず謝りたくなる気持ちを抑え、暁はカチャカチャとティースプーンでやや乱暴に紅茶を混ぜている静に訊き返した。


「…何の話だ?」
「勿論、会長様の話ですよ」
「俺の…か?」


暁は首を傾げる。呆れているような苛立っているような、いつも穏やかな彼のこのような態度は珍しい。

紅茶に一口口をつけた静は、はぁー、と深くため息を吐いた。


「ハルヒですよ。…ウチの子たちが『くっつけ隊』とか馬鹿な事を始める前に、早くあの子をモノにしちゃってくれませんか?」
「…………は?」


中性的な美しい容貌を疲れたように歪ませ言った静に、暁の目が点になる。

ハルヒ、と言う名の知り合いは、暁には一人しか居ない。


「ハルヒ……百瀬春氷、か?」
「えぇ。会長様、あの子と仲がいいでしょう? 『あのKY転校生なんかより、ボケてるけど春氷の方がずっとマシ!』とか言い出す隊員、幹部が増えてまして…。正直隊で動かれると、面倒事ばかりなので……あの子たちが動く前にさっさと春氷をモノにしちゃって下さい」
「いやいやいや…、ちょっとまて」


疲れきったようにため息を吐いて言った静に、暁は思わずカップを持っていない方の手でそれを制した。

くっつけ隊、とは何だ。モノにしろ、との穏やかでない言葉も気にかかる。


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あきゅろす。
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