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──食人人形[キャニバル・ドール]
  …太古文明の遺し物。人間の血肉を食べ、人間のように成長する“人形”



…ユラはレイトが半年ほど前に仕事中に拾った、手間のかかる“お人形”だ。



幼い少女型の人形が、まだ緩く湯気さえ上る人間の血肉を、内臓を食む。

何とも倒錯的な光景だが、最近ではそれを日常茶飯事ととらえる自分がいるのも事実だ。


「……毒されたものだな、俺も」
「…んむ…、むにゃ?」


もぐもぐとヒトの心臓を貪っていたユラが、レイトの呟きに顔を上げた。
…その口元は、さながらミートスパゲッティを食べた幼児のようだ。


「……お前、口元ぐちゃぐちゃだぞ」
「あー…」
「まぁ、いつもの事か…」


諦めたように嘆息し、レイトはユラの側に膝を付いた。

…血の匂いが濃く香るが、元より血生臭い状況には慣れている生業だ。


「…ホラ、こっち向け」
「ん〜」


持参してきたナプキンで、ユラの血に汚れた口元を拭いてやる。
嫌がって首を振るユラの頭を抑え、顎を捕えて清潔な布を当てる。


(…まったく、俺は母親か)


自嘲気味に思い、レイトはナプキンをスーツのポケットにしまった。

ユラはレイトの一挙手一投足をジッと見つめながら、血の付いた指先をぺろりと舐める。


…紅が拭われれば、驚く程に白い人形の肌。
紅い舌や血は、その白を更に際立たせる。


「……レイト?」
「…お前はやはり、人形だな」


幼子のように無邪気で、倒錯的な、
人工物の美しさを持った、人形。


「…そんなの、最初からわかってるはずでしょ? マスター」
「…そうだな」


普段は「レイト」と呼び捨てにする癖に。
…こんな時だけ、「主人[マスター]」と。

食事を終えたキャニバル・ドールが、主人の胸に飛込んだ。


「ねぇレイト、だっこして?」
「するまで離れないんだろう、どうせ」


ギュッと強くしがみついてくる人形を抱き上げ、レイトは仕方ないと言うように肩をすくめた。


「食事には満足したのか?」
「うん。…だからおうち帰ろ」


抱き上げられたユラはレイトの首に腕を回し、甘えるよう擦り寄った。

レイトはそんなユラの髪を指で梳き、またいつものように息をついた。


「…まったく、世話の焼ける“人形”だ」



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あきゅろす。
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