short
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「……なっ、何だっ!?」
突然胸を射抜かれ、倒れ伏した目の前の一人に動揺した男が叫ぶ。
五秒前の取引相手、…今は、物言わぬ死体。
「……ッ、何者だ…ぐっ!!?」
男が叫ぶよりも先、黒の銃弾がその額を射る。
…額から、頭蓋へ。頭蓋から、脳髄へ。脳髄を通ってまた、外へ。
またも埃のたまった床に頽(くずお)れた男に、他の男たちが声をあげる。
そこまできてやっと、男たちは扉の際に立つ黒の青年の姿を見付けた。
「…何だ、テメェっ!」
「いきなり何しやが……ッ!」
にわかに殺気だった男たちには応えず、レイトはただ何も言わずに黒の銃を構えた。
ユラはそんなレイトの傍らに佇み、次々と崩れて行く男たちを見つめている。
「…あいかわらず、オシゴトの時は無口なんだね」
「……これから死ぬ奴らに、応えるだけ無駄だろう」
「そっか」
無感情に言ったレイトにこれまた無感情に答え、ユラはまた正面を向いた。
……十数人はいたであろうか、その男たちは、数分も経たないうちに全てが床に沈んでいた。
埃が舞い散り、室内に静寂が戻る。
「……レイト、」
「好きにしていい」
数歩先に崩れたまだ温かい肉塊を見下ろしたユラに、レイトは続きを言わせる事なく許可を出した。
ユラはパッと表情を輝かせ、パタパタと跫音を立てて目の前の“食事”に走り寄る。
「いただきまぁす」
幼さの滲んだ声でそう言い、
横たわった男の腹を、切り裂いた。
まるで、魚でも捌くようにヒトの腹が切り裂かれて行く。
裂目から溢れ出した紅を、ユラは爪先をぺろりと舐める事で味わう。
「…おいし……」
…呟かれた幼い声には、恍惚の色が滲んでいた。
豪奢な黒のドレス袖が汚れるのも気にせず、ユラは切り裂いた肉の中へと小さな手を差し入れる。
グチャ、肉塊を掻き回す音が静かな部屋に響く。
ややして、ユラは紅い紅い塊を引っ張りだし、林檎でも噛るようにかぶりつく。
クチャ、…柔らかく、まだ生温いモノを食す咀嚼音。
小さな口元を紅い液体が伝い、唇や顎を濡らして行くのを、レイトは冷淡に眺めた。
(……本当、美味そうに食べるものだな)
口元や衣服が汚れるのも気にせず食事を楽しむ人形に、レイトは感心半分呆れ半分に思った。
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