[携帯モード] [URL送信]

short
3

「……なっ、何だっ!?」


突然胸を射抜かれ、倒れ伏した目の前の一人に動揺した男が叫ぶ。


五秒前の取引相手、…今は、物言わぬ死体。


「……ッ、何者だ…ぐっ!!?」


男が叫ぶよりも先、黒の銃弾がその額を射る。


…額から、頭蓋へ。頭蓋から、脳髄へ。脳髄を通ってまた、外へ。


またも埃のたまった床に頽(くずお)れた男に、他の男たちが声をあげる。


そこまできてやっと、男たちは扉の際に立つ黒の青年の姿を見付けた。


「…何だ、テメェっ!」
「いきなり何しやが……ッ!」


にわかに殺気だった男たちには応えず、レイトはただ何も言わずに黒の銃を構えた。

ユラはそんなレイトの傍らに佇み、次々と崩れて行く男たちを見つめている。


「…あいかわらず、オシゴトの時は無口なんだね」
「……これから死ぬ奴らに、応えるだけ無駄だろう」
「そっか」


無感情に言ったレイトにこれまた無感情に答え、ユラはまた正面を向いた。


……十数人はいたであろうか、その男たちは、数分も経たないうちに全てが床に沈んでいた。

埃が舞い散り、室内に静寂が戻る。


「……レイト、」
「好きにしていい」


数歩先に崩れたまだ温かい肉塊を見下ろしたユラに、レイトは続きを言わせる事なく許可を出した。

ユラはパッと表情を輝かせ、パタパタと跫音を立てて目の前の“食事”に走り寄る。


「いただきまぁす」


幼さの滲んだ声でそう言い、




横たわった男の腹を、切り裂いた。


まるで、魚でも捌くようにヒトの腹が切り裂かれて行く。
裂目から溢れ出した紅を、ユラは爪先をぺろりと舐める事で味わう。


「…おいし……」


…呟かれた幼い声には、恍惚の色が滲んでいた。


豪奢な黒のドレス袖が汚れるのも気にせず、ユラは切り裂いた肉の中へと小さな手を差し入れる。

グチャ、肉塊を掻き回す音が静かな部屋に響く。

ややして、ユラは紅い紅い塊を引っ張りだし、林檎でも噛るようにかぶりつく。


クチャ、…柔らかく、まだ生温いモノを食す咀嚼音。


小さな口元を紅い液体が伝い、唇や顎を濡らして行くのを、レイトは冷淡に眺めた。


(……本当、美味そうに食べるものだな)


口元や衣服が汚れるのも気にせず食事を楽しむ人形に、レイトは感心半分呆れ半分に思った。


≪  ≫

3/5ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!