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チョコチップクッキー(14年ホワイトデー)

「はいミッサ、これホワイトデー」
「は……」


放課後。今日は特に何もないものの惰性で居残っていた教室で、ふと思い出したように稜平が机の上に載せた可愛らしいラッピングのされた袋に、満朔はぽかんとして目を見開く。

稜平からホワイトデーのプレゼントを渡されるなんて、想定していなかった。いや、全く期待がない訳ではなかったが、でも気付いていないと思っていたのに……。

目を見開いて固まる満朔を見て、彼が何を思っているのか分かったのだろう、稜平がひょいと肩をすくめる。


「机の中に無記名で入れたって、ミッサからのなら分かるから。親友だし、彼氏なんだし」
「っ…!?」


赤いラッピングのビタートリュフだっただろ? と、ぴたりと指摘され、満朔は肩を奮わせた。

そう。今から一ヶ月前の2月14日、バレンタインデー。相手と面と向かってチョコレートを渡すのが恥ずかしかった満朔は、こっそりと彼の机の中にプレゼントを忍ばせたのだ。

容姿の良さや誰にでもフレンドリーな性格から、稜平は学内でもかなりモテる方に入る。女の子からの本命チョコやら、クラスメイトや女友達からの義理チョコ友チョコなど、紙袋がいっぱいになるくらいたくさんチョコを貰っていたから、どうせ満朔の紛れさせた一個など気付かないだろうと思っていたのに。

何でもないように名前が無くたって分かると豪語する稜平に、思わず顔が赤くなる。此処が二人以外誰もいない教室で良かった。と言うか、稜平は満朔のこの反応を想定して二人きりになる放課後まで待っていた気がする。

普段空気が読めないバカのくせに、こんな時だけ……。何故か恨めしげに稜平を見つめる満朔に、稜平は「あれ? 間違った?」なんて見当違いな事を言っている。


「合ってるから悔しいんだよ、バーカ! 何だよお前、普段バカなくせにこういう時だけ鋭いとか……」
「ふふん」
「ドヤ顔止めろむかつく!」


憎まれ口を叩いても、真っ赤な顔をしていては意味がない。ニヤニヤと笑う稜平にいたたまれなくなって、顔を俯かせた。

机の上に載った、稜平に似合わない乙女なラッピングの袋。それを自分の方に引き寄せ、満朔はもごもごと言う。


「……あ、ありがと」
「……」
「何、その沈黙」


満朔の言葉に何も言わない稜平を顔を上げて見上げると、ほんのりと赤い顔で頬を掻いていた。


「……お前も照れてんの?」
「…ていうか、ミッサが可愛くて萌えてる。何ミッサまじ可愛いもうこの場で押し倒したい」
「バカ!!」


赤い顔で明け透けな言葉を吐いた稜平に、思わず満朔は声を荒げた。


「こんな教室で……、あ」
「教室でなければいいんだよな? よし帰ろう、今すぐ帰ろう」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待て、失言だった」
「待たない、もう今すぐ満朔が欲しい」


稜平を押しとどめようとする満朔の手を掴み、低い声で囁く稜平。

こんな時だけ、いつものあだ名ではなくてちゃんと名前で呼んでくるのだから、稜平は狡い。

そのまま手早く荷物を纏めて教室を出た満朔が鞄の中に入れられたチョコチップクッキーを口に出来たのは、もう翌日になってからだった。













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ホワイトデーの二人。稜平が満朔からのチョコが分かった理由は、手書きのバレンタインカードです(笑) 無記名でも筆跡で分かったよww

稜平はモテるだけあって無駄にイケメンです、普段はバカだけどww


14/3/14

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あきゅろす。
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