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「うるせ、お前らなんて三バカで充分だ!」
「稜平、接客中だろ」


三人に向かって舌を出して言った稜平に、この中では一番成績の良い満朔は呆れたように言った。

そんなやり取りをしながら奥の席に通された彼らはそれぞれ腰を下ろし、案内してすぐにその場を離れた稜平は人数分の水を取って再び戻ってくる。


「稜平、友達割で何か安くなったり、サービスない?」
「バイトにそんな権限ねーよ」
「稜平、権限なんて日本語知ってたんだー?」
「流石にバカにし過ぎじゃね!?」


今井のツッコミに憤慨する稜平だが、普段彼の勉強を見ている満朔は彼の言葉に頷いていた。


「でも、漢字では書けねえんだろ?」
「……ハイ」
「稜平って、上浦には頭が上がらないよな」


満朔の指摘に小さくなって頷いた稜平に、水を飲みながら木村がしみじみと言う。


「まぁ、普段のあれこれを見てれば分かるっしょ」
「世話かけまくりだもんねー」
「余計なお世話だっての! ……じゃ、ご注文が決まったらお手元のボタンで呼べ」


やや乱暴に言って、稜平は仕事へ戻って行った。

彼らを相手にギャーギャー騒いでいたのが嘘のように、他の席では普通に愛想良く接客をしている。そんな様子をぼんやりと眺めていた満朔に、彼の向かいに座った田原が訊く。


「上浦って、あんま稜平がバイトしてる所には来ねーの?」
「稜平がバイトしてる時に来るのは、初めてだな。稜平が非番の時に一緒に来た事は何度かあるけど」


何気に、稜平が仕事している姿を見るのは初めてなのだ。珍しいものを見るように、接客をする稜平を眺めている満朔に、三バカは顔を見合わせる。


「見過ぎでしょ。上浦、注文決まったの?」
「俺はパフェって決めてるから」
「他には?」
「あとはミルクティー」


ペットボトルのミルクティーとは違うけれど。最近は、外食などで頼む飲み物も大概はミルクティーだ。


「俺は決まってるから、お前らもさっさと決めろ」
「えー、何にしよっかな」
「俺は上浦と一緒でいいやー」
「俺パンケーキ食べたい」


わいわいとメニューを覗き込む三バカから視線を離し、また稜平観察に戻る。

同じくバイトだろう接客の女性と、何やら話をしている。仕事の話だからだろうか、いつもよりも真面目な表情で格好良い……と言うか普段の残念さがなりを潜め、本来の容姿の良さが際立つような感じだ。


(うーん……)


何というか、違和感というか、むずむずするようなこの不思議な感じ。それでも満朔は、稜平の様子をぼんやり眺め続けた。


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