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short
プリンパフェ

普段自分の隣でだらけた姿を晒している人間が働いている姿は、なかなか面白いものだ。


「いらっしゃ……いませー」


新たにドアを開けて入ってきた客にそうお決まりの言葉を言いかけた稜平は、彼らの顔を見て露骨に顔をしかめた。続けた歓迎の言葉にも、愛想が欠片もない。

見慣れない稜平の姿に、ぱちりと瞳を瞬かせる満朔。そんな彼と一緒に店に来た仲の良いクラスメイト三人は、ファミレスの制服に身を包んだ稜平にニヤニヤと笑う。


「なんだよ店員さーん、態度悪いぞ?」
「すげー、稜平がちゃんと仕事してるー」
「お前、ちゃんとメニューとか覚えられんの?」
「うるせーよ! 何お前ら! 何で来てんの!?」
「おいおーい、俺らお客様だぜ?」


ニヤニヤとからかうように言うクラスメイトたちに稜平が怒鳴り返すと、三人の中では一番お調子者でからかい癖のある田原(たはら)がつんつんと稜平の肩をつついた。

その言葉で仕事中であるのを思い出したのか、稜平はもう一度だけ顔をしかめ、次に貼り付けたような営業スマイルを浮かべた。


「チッ。……お客様、四名ですか? この時間は全て禁煙席となりますが、よろしいですか?」
「今何か舌打ちが聞こえた気がするけど……、まぁいいや」
「煙草なんて吸わないよなー」
「ていうか俺ら未成年だから」
「では、奥のお席へどうぞ。――32番、四名様入ります!」


最後は店内の他の店員に告げる為にそう叫んだ稜平に、彼に案内されながら満朔は「働いてるなぁ…」なんてぼんやり思う。

感心しているような驚いているような、少し複雑な気持ちで稜平に続いていると、彼が不意に満朔を振り向いた。


「てかミッサ、どうして」
「……店の期間限定パフェが美味かった、って言ったの稜平だろ」


いつもの調子で満朔に話しかけてくる稜平に何故かほっとして、満朔もいつも通りの調子で返す。

満朔の応えに、稜平はゆるりと頭を振った。


「言ったけど。よりによってこいつら三バカと来るなんて……」
「流石に一人でパフェなんて食べに来れないっての」
「なら俺が非番の時にでも一緒に行ったのに」
「てゆーか稜平! 流石に聞き捨てならないんだけどー?」
「少なくとも、俺は稜平よりは馬鹿じゃないぞ」


こそこそと囁き合う満朔と稜平に、稜平に三バカ呼ばわりされたクラスメイト、間延びした口調の今井(いまい)とメガネキャラの木村(きむら)が後ろから抗議する。

確かに二人とも、少なくとも稜平よりは成績がいい。しかし、彼らが成績優秀であるというより、比較的対象の稜平の成績が学年の底辺を這っているだけだ。今井にしろ木村にしろ田原にしろ、成績は平均並みかややそれを下回るくらいである。


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