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頬を包み込こむ手のひらの感触を受け入れながら、セインはおずおずとヘンリーを見上げる。
疑問をぶつけるのならば、今しかない。
「……ヘンリーのものになるって、どういうこと?」
「ん?」
「分からないよ。僕が貴方のものになったら、今までと何がどう変わるの?」
絞り出すように疑問を吐き出して、セインはきゅっと唇を噛み締める。
セインを見下ろしていたヘンリーはその問いにぱちりと深蒼の瞳を瞬かせたが、やがてふっと笑った。
「……そうだね。君の身も心も、私だけが支配したいな」
「だから」
それが、具体的にはどういう事なのか。
セインがそう口に出したその直後に、背を引き寄せられて躰をすっぽりとヘンリーに抱きくるめられる。
「!」
「……じゃあ、そこから先は、実践で教えてあげようかな」
「え、……あっ!?」
自分より体格の良いヘンリーに抱きすくめられては、セインはそれを振り払う事は出来ない。そもそも、セインはヘンリーに力で勝った試しなどない。
実践で、と妖しげな言葉を囁いたヘンリーは、抱きすくめたセインの首元に顔を埋めると、その場所を確かめるように舌でちろりと舐めた。
「ひゃっ…!」
薄い皮膚の上を、濡れた熱いものが這う感触。
気持ち悪い、とは言い切れない不可思議なぞくぞくと背を這う感覚。戸惑いながら身を捩るも、力の強いヘンリーは当然それを許してはくれない。
「や…ぁ」
「……敏感だね」
かわいい。そう囁く声と共に、肌に吸い付かれる感触。ちりちりと肌の上を滑るような微かな痛みに、セインはビクッと背を震わせた。
「あ、なに……?」
「ん。色が白いから、綺麗に付いたね」
心なしか少し満足げに息を漏らしたヘンリーが、とん、とん、と指先でセインの首筋を確かめるように叩いた。
その下に付いた鮮やかな紅い痕など当然セイン自身には見える筈もないが、ヘンリーの様子を見て戸惑ったように躰を捩る。
「なに…?」
「シルシだよ」
「シルシ?」
「うん。セインが私のものになる、そのシルシ」
そう言ってまた一つ、セインの首筋に紅い痕を咲かせた。
「あ、まっ……」
待って。その言葉を口にする前に、今度はヘンリーに唇を塞がれる。勿論、彼の唇で。
ただ重ねるだけではない、隙間から舌を差し込まれる深い口付けを受けながら、セインはあわあわと慌てた。
まだ、彼のものになるともならないとも言っていないのに、いつの間にか強制的に彼のものになってしまう流れになっていないだろうか。
14/2/20
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