short
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「ナオさん、見て。新しいの出てる」
ちょうど季節の変わり目頃だからか、新商品や季節限定の味のお菓子が数多く売り出されていた。
売り場に目立つ『新商品』のポップを見ながら、どことなくテンションの高いヤオさんに小さく笑う。
「いっぱい出てるな。…全部は買えないぞ」
「分かってるってー」
そう頻繁に外出出来る訳ではないから、ある程度は買いだめもするが、それでも限界はある。俺が押すカートの上の籠に次々とお菓子を放り込む相手にそう言うと、彼は本当に分かっているのかいないのか、軽い調子で応えた。
結構図体はデカいのに甘いお菓子が大好物だとか、可愛い面もあるものだ。よくそのおこぼれに預かっている俺が言うような事じゃないだろうけれど。
なんて思いながら俺も棚を見ていると、ちょうど目に止まった商品をジャストタイミングでヤオさんが持ち上げた。
「これ、ナオさん好きそう」
「……正解」
なんでもお見通しというか、ツーカーというか。にやりと笑った相手の表情が、ほんの少しだけ気恥ずかしかった。
ぷい、と視線を逸らした俺の耳に、クスクスと水が流れるような小さな笑い声。
そうしてヤオさんの好み六割、俺の好み四割くらいの比率でお菓子を買い込むと、カートを押す腕に相手の手が触れた。
「交代するよ。ちょっと重くなったでしょ」
「…それ程でもないけど」
まぁ、確かに籠の中の物は増えたから重くなりはしたけども。これくらい負担になる程ではない、とは思うが、彼の方から持ってくれると言うのなら断る理由はない。
あとは買い置きの切れていたカップめんなどを買い足して、必要なものはこんなものだろうか。寮内の売店でも買えるものは、そっちで買えばいいし。
「それでも、思ったよりも大荷物だね」
「半分くらいはヤオさんのお菓子だけど」
「ははは」
俺がそう言うと、彼は軽く笑った。…うん、まぁ別にいいんだけどね。
レジに並んで、会計を済ませる。レシートもしっかり貰って、クラスメイトの分の買い物を後で精算せねば。
「……って、あ。しまった」
「ん? 何か買い忘れ?」
「いや。…この後飯食べるって言ってたじゃん? この荷物持って食べに行くなら、先に食べてから買い物の方がよかったかな、って」
「あ」
今更気付いても後の祭り。揃って「あちゃー」というような表情を晒した俺たちだが、やがて仕方ないと諦めて首を振った。
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