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* * *
「ナオさん、もうすぐ着くよ」
「ん……」
ゆさゆさと肩を揺すられる感触に、ゆっくりと瞼を開ける。
目が覚めた場所は相手の肩の上。一応、反対の窓側に頭を預けるようにして寝たつもりだったんだけど。
寝ている間にいつの間にか寄りかかっていたらしいヤオさんの肩から身を起こし、俺はゆるりと頭を振った。
「……ん、ごめん、重かった?」
「いや、全然」
ナオさん、全然軽いよ。と続けられた言葉は、俺をフォローする為に吐かれたのだろうが、素直に安心していいのか少し微妙である。重いよりはいいかもしれないけど。
寝乱れてしまった髪を手櫛で乱雑に整えていると、跳ねている箇所でもあったのかヤオさんの手が頭に触れた。
「…よし」
「直った?」
「直った」
ちょいちょい、と側頭部に触れた手が離れていき、俺は訊いた。うんうんと頷く相手に安堵して、窓の外を振り向く。
ちょうど目的のバス停が見えてきたところで、俺たちは荷物を持って立ち上がった。寮生の俺たちはICの定期券なんて持っていなく、ちゃりんちゃりんと音を鳴らして小銭で運賃を払う。
バスを降りれば、いくらも歩かないうちに目的の大型スーパーだ。
「とりあえず、忘れないうちにシャー芯から買いに行こうか」
「そうだね」
ポケットからメモを取り出しながら、ヤオさんに言う。俺たちの買い物以外にも、文房具を買ってきて欲しい奴はいるみたいだ。
「マスキングテープって、学校には売ってないのかな?」
「…どうだろ、売ってた気もするけど。柄が気に食わないのかな?」
「柄、ねぇ」
メモを見ながらそんな会話をしているうちに、スーパーに着く。
さてと、久しぶりのショッピングだ。なんでもない風を装いながらちょっぴりテンションの上がる俺に、ヤオさんがクスリと笑った。
動物が表紙のノート、なんて普通のノートじゃ駄目なのかと思うようなリクエストもあったが、文房具は俺たちの買い物も含めて滞りなく買い終えて、次は食品売り場に足を向ける。
メモにはちょっとマイナーなドレッシングなんて載っている。これも寮には売ってないんだろうな。
「バジルチーズドレッシングってどれ?」
「ていうか、ドレッシング売り場どこ?」
食品売り場はさすがに広い。ふらふらと棚の間をさまよいながらも、なんとかドレッシング売り場を見付けて目的の品を籠に入れる。
「ノンオイル、とかいうけどさ、ドレッシングはちゃんとオイル入ってた方が美味しいよね」
「ノンオイルは味を重視してる訳じゃないだろ? 健康指向? 的な」
「俺はどっちかっていうとより美味しいものが食べたいけど」
「歳を取るとそうも言ってられなくなるんだろ」
他愛もない会話をしながら、次にやってきたのは第二目的のお菓子コーナー。甘い物好きのヤオさんが、さり気なく瞳を輝かせる。
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