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放課後。ポケットにメモを入れて、担任から貰った外出許可を携えて学校を出る。

街から少し離れた場所にある全寮制であるうちの学園から離れる主な方法は、本数の少ないバスのみ。いや、タクシーや専属運転手の運転する自家用車、なんて手段もあるらしいが、一般の学生のお財布事情に一番優しいのはバスだ。

一応、授業が終わってすぐになら、それにタイミングを合わせてあるのか10分程度待てばバスは来る。学園前のバス停の時刻表を確かめ、俺とヤオさんは備えられたベンチに座った。


「メモによると、大体みんな大型スーパーに行けば売ってるかな」
「そっか」


元々の目的である俺たちの使うシャープ芯も、そこに行けば売っているだろう。

まだ夕飯も食べていないし、早く買い物して戻らないと……。


「いや、寧ろ夕飯は外で食べて来てもいいんじゃない?」


ちょうど俺が考えていた事に合わせるように言ったヤオさんに、俺はそれもそうかと頷いた。

バスの待ち時間も考えると、最速でも寮に帰ってこれるのは二時間から三時間は後だ。その頃には、育ち盛りの腹はすっかり空っぽになってしまうだろう。


「外食とか久しぶりだな」
「ま、多分ファミレスだけど」
「それでも久しぶりだ」


夕飯はほぼ毎回寮内の食堂で取っているから、それも外食といえば外食なのかもしれないけれど。学内の購買と食堂以外の食事なんて、久しぶりだ。


「ナオさん、楽しそうね」
「まぁ、外出も久しぶりだからな」


全寮制っていうのは、どうにも閉鎖的で刺激がない。何でもないただの買い物だけど、久々の学園の外は少し気分が高揚する。

ベンチの上に座って足をぶらぶらと遊ばせていると、行儀が悪かったからか隣のヤオさんに片足を押さえられた。仕方なく足を地面に下ろすと、ちょうどそのタイミングでバスがやって来る。

ガラガラに空いたバスに、俺たちは二人で乗り込む。今日は俺たち以外に外出する生徒はいないらしく、貸切状態のままバスは発進した。

静かなバスの中で、俺は小さく欠伸をする。

街までは、バスでおよそ20分程。うたた寝しても、相方が起こしてくれるだろう。そう思った俺は、眠気に任せてバスの窓に頭を預けた。


「ナオさん、寝るの?」
「…着いたら起こして」
「分かった」


小さな笑い声を聞いたのを最後に、寝付きの良い俺の意識は途切れた。


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