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頼み事をしてきたクラスメイトにいいよと頷きつつ、俺はヤオさんを振り向いた。


「別にいいよな?」
「いいよ。てか、他にも誰か何か買って来て欲しい人いたら買ってくるから、まとめて言ってよ」


にこにこと優しい笑みを浮かべて言うヤオさんは、ホント面倒見がいいというか人が好いというか。なんだかんだ言いながら俺も断れないのは同じなので、結局は似た者同士なのだろうけど。

俺はメモ帳代わりの小さなノートを取り出して、シャープペンと一緒に最初に話しかけてきたクラスメイトに手渡す。


「買ってきて欲しいものとみんなの名前、リストにして。金は後で徴収するつもりだけど、量が多くて足りなそうなら先に出してもらうから」
「あ、分かった」


人数にもよるけど、大掛かりな買い物になってしまうかもしれない。メモがないと誰が何をという事を間違える心配もあるので、自分自身で責任を持って書いて貰おう。

渡したノートがクラスメイトの間を回っていくのを見ながら、俺はヤオさんの差し出すお菓子の袋に再び手を入れた。


「お菓子も買おっか。そろそろ新作出てそう」
「寮の中だと、定番商品しか置いてないもんな」


ヤオさんは少しもの珍しいお菓子が好きで、季節限定の味やらご当地限定なんてのが大好きだ。ものによっては失敗しそうなそれも、彼のセンスは確からしく当たりが多い。よくそのおこぼれに預かる俺は、小さく笑って頷いた。

クラスメイトの間を回りきったノートが俺の元に戻ってくる頃、ヤオさんの手にしたお菓子の袋が空になるのと同時に次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。

戻ってきたメモに目を走らせつつ、俺は次の授業の教科書を取り出した。この量なら、事前徴収はしないでもなんとかなりそうか。


「ありがとう、おかーさん」
「…はいはい」


まったく、この歳でこんなにデカい、しかもこんなにたくさんの子供を持った覚えなんてないのに。

ノートを返してきたクラスメイトの言葉に、俺は苦笑いした。それは前の席のヤオさんも同じだったらしく、そのクラスメイトはなおも笑う。


「おとーさんおかーさん、おんなじ顔してる。ホント、仲良いなぁ」
「……」
「……」


おんなじ顔、と言われた互いの表情を見合わせ、俺たちはまた同時に苦笑いした。

まぁ、仲は悪くはないと思うけれど。いつも周りから『夫婦扱い』っていうのも、なんかなぁ。

チャイムから少し遅れて教室に入ってきた教科担当の教師によって、会話は打ち切りになり、俺は再び教科書を開いた。

目の前の席に座る親友は、今一体何を考えているのか。普段はあれそれで何となく察せるのに、改めてそう思うと相手が分からなくなる気がした。


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